デジタルマーケティングを失敗させる、ネイティブ広告の3つの考え方。


数年前から、デジタルマーケティング業界で急激に普及し、その活用の真価が問われている施策が「ネイティブ広告」です。ソーシャルメディアやキュレーションメディアの発展で、ネイティブ広告というと「ステマ」を思い浮かべる方も少なくないでしょう。2016年にはWebメディア記事の信憑性が社会問題となり、Web広告のあり方以前の問題が浮き彫りとなりました。

しかしメディアとネイティブ広告は、切っても切り離せない密な関係にあります。デジタルマーケティングを成功させるためには、ネイティブ広告への取り組み方を根本から見直す必要があるかもしれません。まずは、ネイティブ広告の定義を確認してみましょう。

ネイティブ広告の定義

日本インタラクティブ協会(以下、 JIAA)は、以下のように定義付けています。

「デザイン、内容、フォーマットが、媒体社 が編集する記事・コンテンツの形式や提供するサービスの機能と同様でそれらと一 体化しており、ユーザーの情報利用体験を妨げない広告を指す」

なお、米国 IAB では、ネイティブ広告とは、「形式 form」と「機能 function」が、 広告が掲出される場所に合ったものとされている。

また、ネイティブ広告の主体は、広告枠である。

出典:ネイティブ広告ハンドブック2017

まず、「ネイティブ広告とは、広告枠のことである」これが前提条件であると認識しましょう。

さらにその広告枠のデザインが、媒体の提供する通常記事のデザインと同一であること。その上で、広告がもたらすユーザー体験も媒体の記事閲覧時と同じであることがネイティブ広告の条件となります。つまり、ユーザーには通常記事と変わらないデザインや読後体験を与えられる記事を届けること。この2つの条件を満たすものが「ネイティブ広告」です。

この定義を念頭に入れ、サムライトの事例を交えながら、効果的なデジタルマーケティング戦略とネイティブ広告のあり方について、一緒に考えていきましょう。

 

タッチポイントを正しく設計する

現在の生活者は、1日の中で様々なメディアに接触しています。メディア接触時間の比重がマスからデジタルへと移り変わり、デジタルの中でもさらに細分化され、一つのメディアに対する依存度は大きく低下しました。一方で、生活者の1日の可処分時間は限られています。マーケターは、誰に・どこで・どのように接触し・何を伝え・何をさせるのかを明確にし、戦略的に生活者を購買まで誘導していくことが求められます。

ファネル上部の、ブランド認知や理解を得ようとする場合、バナー広告だけでは生活者に届かないかもしれません。ComScore社の調査によると、生活者の84%は1か月の間に1度もクリックせず、クリック者の上位4%が全クリックの67%を占めている、というバナー広告の現状が報告されています。

したがって、限定的な生活者へのアプローチを得意とするバナー広告は、ファネル下部の検討・購入層を獲得していくことが適切な役割であると言えるでしょう。

一方でネイティブ広告は、バナー広告と比べて視認率が高く生活者に広くリーチができ、有益な記事コンテンツを提供しているため、ファネル上部を担える可能性があります。

ネイティブ広告で認知・理解を促進し、リターゲティングでバナー広告を使いキャンペーンサイト・LPに誘動する。購入者にはメール配信やSNSアカウントなどを通じて継続的に接触しリピート購入や口コミを獲得していく。

このように、広告プロダクトの特性から役割を明確にし、生活者とブランドのタッチポイント設計を正しく行えば、潜在層を育成しつつビジネスを成長させることができます。

 

クリエイティブのA/Bテストを行う

ここからは、実際にネイティブ広告をファネル上部の施策へと落とし込んでいきます。デジタルマーケティングでは、クリエイティブの数に制限はありません。生活者との接点であるクリエイティブを、多数・同時に・リアルタイムに測れるというのは非常に優れた点です。画像・コピー・CTAなど、様々な観点からクリエイティブテストを行いましょう。弊社の事例では、画像・コピー・性別・年齢別・平日or祝日などをかけ合わせ、計100パターンほど配信を行ったこともあります。

 

A/Bテストを繰り返し、効果の高いクリエイティブを見つけることは、デジタル施策にとどまらず、店頭のポップやマス広告にも活用できる可能性を秘めているのです。

 

エンゲージメントを測る

クリエイティブのA/Bテストは、バナー広告でも行われています。ネイティブ広告ではさらに一歩踏み込み、独自の指標「エンゲージメント」が必要です。弊社では、滞在時間と読了率の2つの項目でエンゲージメントを測っています。

前述いたしました通り、メディアの接触時間はどんどん細分化されていく一方で、可処分時間は増加しません。マーケターは、企業の広告が生活者の時間とどのように関わったのか正しく認識する必要があるのです。

極端な話、クリエイティブテストがうまくワークし、 CPC1円で記事コンテンツに誘導できたとします。しかし、誘導したのち1秒で離脱し記事が全く読まれていない場合、ファネルの上部を担うネイティブ広告の施策としては失敗なのです。

弊社では、クリエイティブとエンゲージメントの両方を掛け合わせたテストを行い、CPC単価を下げつつもエンゲージメントを15%高めることに成功した事例があります。こうしたノウハウを蓄積していけば、誰に・どんなメッセージで・どういった記事が有益なのかが体系づけられ、マス広告を大幅に超える費用対効果を実現することができるのです。

 

終わりに

これまでのネイティブ広告は、視認率とCTRの高さを見込まれバナー広告の代替手段としてファネル下部で利用されてきました。確かに一見有効な手段に見えますが、一度記事コンテンツを挟むネイティブ広告では、CPAを最適化していくファネル下部の施策では成果が見合わず、多くのマーケターを悩ませて来ました。結果、広告枠のデザインのみを同一化し商品サイトへ直接飛ばすといったユーザーを騙すような広告や、広告であるにもかかわらず広告明記をしないステマが蔓延してしまいました。

しかし、正しいタッチポイントを設計し、クリエイティブとエンゲージメントのテストを掛け合わせていけば、ネイティブ広告を盛り込んだデジタルマーケティングは限りなく成功に近づきます。こうしたデジタルマーケティングの取り組みをネイティブ広告事業者から行い、ノウハウを蓄積共有することで、生活者にとってのブランド・広告・メディアの価値をあげていけるのではないかと考えています。


ABOUTこの記事をかいた人

murano

コンサルティング本部所属。 サムライト社に2015年参画。以降セールス、ディレクターを兼務し30社以上のオウンドメディア立上げ運用支援を経験。顧客の求める成果に合わせ、SEO対策・SNS拡散など幅広い施策を提案・実施し数多くの実績を積む。 現在はセールスを中心に、顧客の課題に最適な施策をプランニングし日々提案している。