ブランディング強化に貢献するTwitterアカウントをめざして、味の素社が取り組んだコミュニケーション運用の全貌【事例インタビュー】


今から110年以上前、まだ元号が明治であった時代に創業され、食品事業とアミノサイエンス事業を柱とした幅広い事業をグローバルに展開している、味の素グループ。

味の素グループを牽引する味の素株式会社では、長年の歴史によって築き上げられてきたコーポレートブランド「Ajinomoto」をさらに強化することをめざし、近年、Twitterを活用した広報に力を入れています。

そこで今回は、Twitterアカウント運用の成功に向けたヒントを探るべく、8,000フォロワーの休眠状態だったアカウントを約3年で310,000フォロワーにまで成長させ、ブランディング強化に取り組んできた味の素株式会社の公式アカウント運用の裏側について、味の素株式会社の公式アカウントを担当していらっしゃる中脇様と、Twitter活用を支援してきたサムライトの担当者へのインタビューを行いました。

Twitterアカウントの活用方法、どのような方針・コンセプトを定めているのか、具体的な成果や社内で起きた変化、ユーザーとのコミュニケーションの手法や今後の展望など、Twitterアカウント運用のヒントが詰まったインタビューの様子を、ぜひご覧ください。

ブランディング強化に向け、休眠しかけていたTwitterアカウントの有効活用を模索

──本日はお時間いただき、ありがとうございます!まず、Twitter運用のパートナー企業を選定された経緯を教えてください。

中脇様Twitterのアカウント自体は2010年5月頃に取得していたのですが、休眠状態でした。

生活者の情報取得方法が変化し、SNSが主流になってきている時代の流れを鑑みて、休眠しかけているアカウントをしっかり活用していこうという話になったのがきっかけで、パートナーさんを探すことになりました。

パートナー選定の際には何社かお声がけして、実際にアカウントから投稿をしてもらいました。その中で、サムライトさんのご提案内容や実際に投稿してもらったオーガニック投稿に対するユーザーの反応が良かったことが決め手となり、運用支援をお願いすることになりました。

サムライトさんは熱意を持って提案してくれていたので、とても印象が良かったです。

──うれしいお言葉ありがとうございます!パートナー選定後に取り組みたいと考えられていた課題などはありますか?

中脇様特に若年層における認知度やイメージに課題を感じていて、Twitterを活用することでコーポレートブランドを強化したいと考えています。

製品情報だけでなく、製品やサービス、企業としての活動に込めた想いや理念を届けたい。そして、フォロワーをはじめとする多くの生活者のみなさんに、味の素社の製品だけでなく、企業を好きになり、さらにはファンになってほしいという想いが、スタートした当初からありました。

そこから運用方針についてはサムライトさんと一緒に決めていきました。

──実際にサムライトと一緒にアカウント運用を進めてきた感想はいかがですか?

中脇様非常にフットワーク軽くご対応いただけてありがたく思っています。SNSなので細かくスピーディーに動くのが大事になってくるなか、サムライトさんには他社さんよりも手厚く対応していただいている印象があります。

小屋敷中脇さんが丁寧に真摯に向き合ってくださっているからこそです!

Twitterの特徴として、トレンド性を意識し、きちんと“今を語る“ことが重要だ、ということを味の素の皆様も認識してくださっているので、共通認識のもと、一緒にトレンドに合わせた施策にチャレンジできています。

「今こんなちょっとしたトレンドがあるので、乗ってみてもいいかもしれません」と伝えると「いいですね!やってみましょう」と、いつも前向きに言ってくださるので、私たちもご提案しやすいことが大きいです。

Twitterらしさと味の素様が伝えたいメッセージをしっかり届けていくという方針をミックスしながら、一緒に協力してスムーズに取り組みを進められているので、感謝しています。

会社全体でTwitterを活用しよう!というポジティブな変化が起きているのを実感

──最近、味の素様社内での評価など、変化を感じる場面はありましたか?

中脇様社内でも、Twitterのコーポレートアカウントを活用しよう!という動きが出てきています。

これまでは投稿する前に事前に確認を取る、投稿したら共有する、というこちら側から社内への働きかけばかりだったのですが、最近は社内から逆に「これを投稿して欲しい」という依頼が来るようになり、大きな変化を感じています。

それはフォロワー数が増えてきたことも理由としてありますし、Twitterのコーポレートアカウントに対する社内認知も進んできたからだと思います。

──社内からはどんな依頼が多いですか?

中脇様一番多いのが支社からの相談です。店頭で「ラブべジ®」などの野菜摂取を応援する取り組みを行っているのですが、支社ではPRする場がなかなかないので、そういうときにTwitterのコーポレートアカウントを活用してもらっています。

その他だと新規事業を行っている部署などの投稿も多いです。商品が持っている価値を伝えていくこと、そしてその商品が「味の素社」の商品だと理解してもらうことは、コーポレートブランドの価値につながっていきます。特に新商品の場合は、今まで生活者の方に提供できていない価値があるため、投稿を通じ「こういう商品も味の素社は出しているんだ」と知ってもらうことで、コーポレートブランドの価値向上につながると考えています。

小屋敷事業部からの依頼をもとにしたご相談をいただくことがすごく増えたと感じています。

フォロワー数が増えたりキャンペーンで話題性のあるものをヒットさせることができたことで、「Twitterのコーポレートアカウントでトライしてみようか」と、社内での信頼も生まれてきたのかな、とご相談をいただく度にうれしく思います。

「どれだけ生活者に寄り添えるか」を意識したコミュニケーション運用

──これまでの運用の中で、特に印象に残ったコンテンツや企画などエピソードがあれば教えてください。

中脇様実は毎週社食クイズを投稿しているのですが、そのなかで見えてきたことがありました。

私たちが伝えたいのは「味の素社は健康経営に取り組んでいるんですよ」ということなのですが、Twitterではそこから入るのではなく、興味を持ってもらえる投稿にするために「社食でお会計をするとカロリーや塩分が表示されるんですよ」という写真を載せて投稿し、ツリー投稿で「社食を食べていたら健康な生活が送れるよ、日頃から社員の健康に向けて取り組んでいる会社なんですよ」という内容を投稿しています。

すると、やはりフォロワーからいいねをもらったり、引用リツイートをしてもらえたりしています。

ユーザーと一人の人としてコミュニケーションを取りつつ、コーポレートとして伝えたい軸はブラさずに伝えることで、ユーザーといい関係が生まれてきたと感じています。

小屋敷企業広報のTwitter運用は、すごく難しい部分があると思います。Twitter自体が個人の集まりで自由に言論できるプラットフォームのため、その中に企業として入っていくと、どうしてもユーザーとの隔たりができてしまいがちです。

したがって、Twitterを企業が活用する上では、「企業側がどれだけ生活者に寄り添えるか」がすごく大事になってくると思います。

そのため、まずはユーザーが知りたいこと、味の素さんと仲良くなれそうだな、と思ってもらえる投稿を発信し、その中のセンテンスとして、「実はこんな取り組みをしています」「こんな商品もあります」という部分を補足としてメッセージングしていくよう、コミュニケーションの取り方を工夫しました。

また、キャンペーンを行うとユーザーからのリツイートやリプライによりコミュニケーションが取りやすくなるというメリットがあるので、キャンペーン当選者のツイートに返信する、などのコミュニケーションを取り、接点を持つ機会を増やしました。

今は徐々にユーザーのみなさんがリプライをしてくれたり、温かいコメントを送ってくれたりするようになってきており、発信の仕方・ユーザーとの会話の仕方を工夫してきた成果として、味の素様の取り組みが評価されてきていると実感しています。

中脇様Japan Branding Awards 2022でBest of the Bestを受賞した際、PRするために自分の想いと合わせて投稿したところ、いいねが多くつきました。

そのとき、Twitterって人の温かみを感じられるような投稿をするのがやっぱりいいのだなと感じましたし、投稿してみないとどんな反応が返ってくるか分からないので、これからもトライ&ラーンし続けて勝ちパターンを見つけていくのが大事だと思っています。

小屋敷Best of the Best受賞の際のような投稿は、今までは企業の取り組みとしてシンプルに発信していましたが、他社さんのいい事例を中脇さんに共有したところ、受賞した件について「私自身が思ったことを投稿するのはどうでしょうか?」と投稿案を共有いただきました。

ただ賞を取った、という投稿ではなくて、“賞を取った味の素のアカウントの中の人がどう思ったか”をみんなに伝える内容で、私もとてもいいなと思ったのですが、他にもその投稿がいいな、と思ったユーザーが多かったようで、実際投稿した結果、「味の素さんを応援したい」「そういう想いで働いている味の素社員さん、いいね!」と、いいねも多くつきました。

投稿してみてよかったですし、Twitterの企業アカウントとしてのあり方、どういう風にコミュニケーションをすれば響くかが気づけた事例にもなりました。これからもユーザーとのコミュニケーションに繋がる仕組みづくりを意識した運用を心がけたいです。

若年層への認知拡大を狙ったインスタントウィンの活用

──直近の運用は、どんな目標で行われているのでしょうか。

小屋敷2022年度のKPIは「エンゲージメント率」と「フォロワー数」を掲げており、達成に向けて動いていきました。ただフォロワーを増やすだけではなく、味の素様ブランドの提供価値に賛同してくれるファンを増やしていくことに重きを置いて運用しています。

──目標に向けて運用するなかで、課題となっている点はありますか?

中脇様若年層への認知度やブランドイメージを上げていきたい、というのがコーポレートブランドの課題としてもあるので、Twitterでも若年層へのアプローチをしていきたい、と考えており、サムライトさんにも若年層の獲得強化をお願いしていました。

そうした流れのなか、若年層向けにアジパンダが当たるキャンペーンをしたのですが、若年層の獲得があまり増えず、若年層に刺さる施策を再検討しました。

課題を抱えたまま下期になり、インスタントウィン(※)を活用すれば若年層の反応もいいのではないか、という仮説に基づき、インスタントウィンキャンペーンを実施することになりました。

※インスタントウィンとは、応募後、その場ですぐに結果が分かるくじ引き型のキャンペーン施策

──インスタントウィンキャンペーンを実施された結果はいかがでしたか?

中脇様今までフォロー&リツイートや、カンバセーションボタンを使ったキャンペーンの投稿はしていたのですが、来年度に向けて、当社のアカウントと親和性の高い若年層にアプローチするための違うフォロワーの増やし方はできないかを検討するなかで、今回インスタントウィンを使ったのは、ユーザーからどのような反応を得られるか検証してみるための、テスト的な位置づけでした。

結果としてはすごく反応がよかったので、来年度もインスタントウィンを活用し、若年層ユーザーとの接点がもてるようにしたいと思います。つながったフォロワーの方とコミュニケーションをとり、まずはアカウント自体のファンになってもらう中で、当社の取り組みを共感が得られるように伝えていき、コーポレートブランドの認知度やイメージに関する課題をクリアしてきたいと考えています。

小屋敷今期、キャンペーンの施策を何度もトライし、今年度のKPIとなっていた目標のフォロワー数は達成できていました。

これまでの流れを踏まえ、1月から新しい施策を考える上では「ブランドの好意度を高めていくようなキャンペーンをすること」「今うまく接点を持てていない層の認知を獲得することや、キャンペーンに参加してもらうこと」という課題に対して有効なアプローチを模索することになりました。

そこで、これまであまりうまく接点を持てていなかった若年層の獲得のためには、インスタントウィンを使って気軽に参加してもらえばフォローもしてもらえるのでは、という仮説のもとキャンペーンを設計しました。

中脇さんがおっしゃったとおり、フォロワー数が大幅に増え、若年層の獲得率も他のキャンペーンよりすごく良い結果になりました。手法を少し変えてみることで新しい層のファン獲得ができた事例となり、私たちもとてもうれしく感じています。

──課題解決に向けて、着実に前進しているようですね。

中脇様今も悩みながらやっていることではあるのですが、「コーポレートブランドの価値を上げる」というのはすごく難しいことだなと実感しています。

「生活者に興味を持ってもらいつつ、弊社が言いたいことをどう伝えるか」がTwitter運用の課題でもあるのですが、サムライトさんと運用していくなかで、“ちょうどその真ん中のいい塩梅”の勝ちパターンが見つけられてきていると思います。

コーポレートブランドの価値につながるTwitterアカウントをめざし、次のステップへ

──では、最後にサムライトへのトータルでの評価と、今後の展望などお聞かせください。

中脇様一緒にすごく楽しくやらせていただいています。

今後の展望としては、“アカウントの中の人感”を出しつつ、コーポレートブランドの価値へ繋げていくため投稿の勝ちパターンを多く構築していくことが大事だと考えています。

フォロワー数も引き続き伸ばしていきたいですが、少しずつ投稿を重ねていく中でエンゲージメントを積み重ねて、生活者の方に味の素社が「ただの調味料の会社ではなく、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献している企業なんだ」と認知してもらえればいいな、と思っています。

一気に変わるものではないですので、日々の投稿の中でアミノ酸のはたらきに触れたり、Well-beingに貢献している事業が伝わるように工夫していきたいです。

その中でフォロワーさんとの関係を強化していくために、楽しんでもらう投稿だったり、やり取りをする投稿だったりを織り交ぜて、充実した内容にしていきたいですね。

小屋敷日々中脇さんには感謝しています!中脇さんには「味の素様が伝えたいことはあると思いますが、まずはアカウントの中の人感を小出しにしながら、ユーザーのニーズを満たして仲良くなっていきましょう」とお伝えしながら一緒に運用していて、そこをうまく汲み取っていただいています。

社内でもPRを依頼されるシーンも多くあると思いますが、PRの方針をしっかり解釈し、たくさん社内調整をしながら、その過程でユーザーとコミュニケーションを取る意図をしっかりと社内で伝えてくださっているからこそ、今の味の素様の勝ちパターンが見えるような運用ができていると思います。

次のステップとしては、よりユーザーと企業の垣根を越えながらコミュニケーションが取れる関係性を構築しつつ、ユーザーから「味の素グループってこういう取り組みしていていいよね」「味の素グループの商品を食べることで健康に繋がるよね」といったポジティブな言及がどんどん出てくる関係性になれるように進めていきたいと考えています。

企業アカウントで、ユーザーとの垣根を越えたコミュニケーションを進め、むしろユーザーからポジティブに言及してもらえる立ち位置を実現しているケースはまだまだ少ないですので、そこを実現し、他社さんから「味の素社のコーポレートアカウントを目指したい!」と憧れられる存在をめざしたいですね。

──本日は貴重なお話をありがとうございました!

ユーザーに寄り添いながら運用していくことが企業アカウント成功の秘訣

Twitter運用を成功させるためには、Twitterの特徴に合わせてトレンド性を意識した施策をスピーディーに実行することや、企業が伝えたいメッセージを織り交ぜながらユーザーとの関係性に重きを置いたコミュニケーションに取り組むことが重要である、ということがよく学べた味の素様の事例。

Twitterをただ情報発信をするプラットフォームと捉えずに、生活者と双方向のコミュニケーションをするためのプラットフォームとして捉え、ユーザーに寄り添いながら運用していくことが、Twitterを企業のブランディングやマーケティングに貢献する形で活用する鍵といえるのは間違いなさそうです。

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