「アイドマ」という響き、マーケティングに携わる人であれば一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
アイドマ(AIDMA)は古くからあるもっとも有名な消費行動モデルの一つですが、時代や環境の変化に伴い、新しいモデルも生まれてきています。
そこで今回は、覚えておきたい主要な消費行動モデルの説明とともに、これをどうマーケティング戦略に生かせるのかをご紹介します。
目次
そもそも消費行動モデルってなに?
消費行動モデルとは、消費者が商品やサービスを購入するまでの行動プロセスをモデル化したものです。「購買行動モデル」と呼ばれることもあります。
読者のみなさんも”消費者”の一人ですので分かると思いますが、人は目の前に現れた見ず知らずの商品をいきなり買うことは(ほぼ)ありません。もともとその商品名を見聞きしていた、評判を聞いていた、サンプルを使ったことがあった、などの前段階を経て初めて、購買という行動を起こすのが一般的です。
このように、どのようなプロセスを経て購買に至るかを汎用的にモデル化したものが消費行動モデルです。この消費行動モデルを自社商品に当てはめることで、マーケティング戦略やとるべき施策、伝えるべきメッセージなどを考えやすくなります。
最低限覚えておきたい3つの消費行動モデル
現代、消費行動モデルは細かいものを含めると10種類近く存在していますが、本記事ではその中でも必ずおさえておきたい、代表的な消費行動モデルを3つを取り上げて、詳しくご紹介していきます。
AIDMA
最初にご紹介するのが、冒頭でも触れた「AIDMA(アイドマ)」です。
購入までのプロセスを以下のように5段階に分類し、その頭文字をとって「AIDMA」と呼ばれています。
まず商品やサービスについて認知(Attention)するところから始まり、キャッチコピーなどを通して興味(Insterest)を持ち、その商品が自分にとって必要、もしくは好きだと判断すると、実際に商品を欲しく(Desire)なります。そしてそのことを記憶(Memory)しておき、本当に必要になった時、あるいは購入機会に出くわすことで、実際の購買行動(Action)を起こす、という一連の流れを表しています。
このAIDMAは、1920年代に米国のサミュエル・ローランド・ホールが出した書籍『Retail Advertising and Selling(小売りにおける宣伝と販売)』の中で「広告宣伝に対する消費者の心理的なプロセス」として提唱した考え方です。日本でもっともよく知られているモデルの一つで、およそ100年前に生まれたにも関わらず、現代でもよく使われています。
ちなみにAIDMAは、1898年にセント・エルモ・ルイスが消費者の心理的プロセスについて最初にモデル化した「AIDA(アイーダ)」の派生形であると考えられ、米国ではAIDAの方が主流と言われています。
AISAS
上述の通り、AIDMAが誕生したのはおよそ100年前。購買プロセスの各段階において、新聞広告や屋外看板、店頭などで適切に情報を提供することで、プロセスを前に進めることが可能だと考えられていました。
しかしその様相も、インターネットの登場により変化します。もっとも大きな変化は、消費者の側から情報を取りにいける、また消費者自身が情報を発信できるようになった、という点です。
この環境の変化を踏まえて、電通が2004年に提唱したのが「AISAS(アイサス)」です。
AISASは次の5段階の頭文字をとったものです。
認知(Attention)と興味(Interest)まではAIMDAと同じですが、その後、インターネット上での検索行動が起こります。ちょっと気になった商品はその場ですぐ検索して調べる、という読者の方も多いと思います。そこで必要な情報を得て、欲しいと判断したら実際に購入する(Action)わけですが、ここで終わらず、その商品のこと、あるいは使った感想、体験などをSNSやブログなどに投稿し、シェアする(Share)という行動が最後に加わっています。さらには、消費者によるこのシェアという行動が、新たな認知や検索を生み出す可能性があるという考え方です。
このことから、企業のマーケティング担当者は、AIDMAの時代のように一方的に情報を発信していれば良いわけでなく、検索されやすい環境づくり、またシェアされることを見越した商品設計やプロモーション企画なども必要になったことが分かります。
DECAX
AIDMA、AISASが広告を軸とするプッシュ型プロモーションを前提としているのに対し、昨今重要性が高まっているプル型のコンテンツマーケティング においては、「DECAX(デキャックス)」という消費行動モデルが用いられます。
DECAXでは以下の5つのプロセスに分けられています。
ネットやSNS上での検索という消費者側の能動的な行動によって、オウンドメディアの記事やSNS投稿などが発見される(Discovery)ことからスタートするのが、DECAXの大きな特徴です。そこで自分にとって有益な情報に接することで商品との関係性(Engage)を深め、さらに商品情報ページなどでスペックなどのより詳細な情報を確認(Check)した上で、購入(Action)や体験共有(eXperience)という行動を起こす、という考え方です。
これを実際の施策に当てはめてみると、多くの人に発見してもらうための取り組みの代表例がSEO対策やリスティング広告です。そして、より良い関係性を構築するためには、質の高い有益なオウンドメディアやSNSアカウントを運営することが重要であることが理解いただけるかと思います。
消費行動モデルに基づいてマーケティング戦略を立てる
以上のような消費行動モデルは、マーケティング戦略を考えるフレームワークとして活用することができます。
今回は、【男性向けの超軽量ビジネスバッグをオンライン販売する場合】を例に、具体的にAISASのフレームワークに当てはめてみましょう。
まずは注目・認知を獲得するために、ターゲットであるビジネスマンがよく見るテレビ番組や雑誌広告、インターネット広告などを出稿。I:興味
ターゲットに興味を持ってもらうために、広告で「超軽量」を訴求するクリエイティブを作成(例:「ペットボトル1本分!」)。
S:検索
「超軽量 ビジネスバッグ」などのキーワードでリスティング広告を出稿し、商品LPに誘導。
A:行動
商品LPで、購入決定に必要なスペックなどの情報に加えて、「お客様の声」「日本製」などの訴求で安心感を醸成し、購買を後押し。
S:共有
ハッシュタグキャンペーンを企画し、投稿を収集してブランドサイト内に掲載。
このようにフレームワークを活用して戦略を組み立てると、それぞれの段階における目的ややるべきことが明確になります。また、施策を実施した後も、どの段階が良かったのか/悪かったのかを振り返りしやすいため、PDCAを回しやすくなるというメリットもあります。
商材や目的によって使い分けを
今回ご紹介したAIDMA、AISAS、DECAXはそれぞれ大きな特徴を持っています。今やインターネットが無くてはならない時代ですが、AIDMAが古いということでもありません。テレビCMやサンプリング、店頭POPなどオフラインでのコミュニケーションをメインとする場合などには依然として有効です。
大切なことは、自社商品のカテゴリや予算、ターゲット層などによって適切なフレームワークを選択し、戦略構築に活用することです。
また、ここまで読んできて既にお気づきの方もいると思いますが、今回ご紹介した購買行動モデルは基本的に、「BtoCビジネス(個人消費者を対象としたビジネス)」に適用されるものです。
「BtoBビジネス(企業を対象としたビジネス)」はBtoCとは購買プロセスが大きく異なり、比較的長い時間をかけて複数の段階(人)を経て意思決定されるという特徴があります。また、SNSがここまで普及した現代でも、BtoBの世界では購入後の体験シェアというものが起こりにくいという傾向もあります。
BtoBビジネスを展開する企業のマーケティング担当者は、自社の顧客がどのような意思決定・購買プロセスをとるのかを正しく理解し、それに対応したマーケティング戦略を構築することが大切であることも覚えておきましょう。
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