ブランドパーパスを効果的に伝えるコミュニケーション(後編)――パーパスを掲げるブランドの「責務」は、スパイダーマンが教えてくれる


NEW STANDARD(旧:TABILABO)という会社で、マーケティングを担当しています山田です。前回の記事では、ブランドは生活者が直面している課題=悪に対して、パーパスに沿ってブランドなりの答えを提示すべきなのではないか、というお話をしました。ブランド視点でパーパスを伝えるのではなく、パーパスを生活者の視点に変換してメッセージを伝えようという提案です。

今回はその後編です。生活者から強固に信頼され共感され続けるために、ブランドがなすべき最も重要なことは何かを紐解いていきたいと思います。

勇気を持って、パーパスを体現し続ける

コミュニケーションとは、メッセージだけではありません。掲げたメッセージに対して行動が伴い、その双方が生活者に伝わるからこそ、生活者とブランドの間に信頼が生まれるのです。ジム・ステンゲル氏のActivation Frameworkによると、以下の3つの質問に答えることで生活者とのエンゲージメントを高めることができるとされています。

1. パーパスを体現できる行動は何か?
2. その行動に顧客や消費者が参加できる方法は何か?
3. その活動の効果を証明し、伝える方法は何か?

 

ヘアケアブランドの「パンテーン」の活動は、多くのブランドにとって参考になると思います。昨年9月末に「就活をもっと自由に」というテーマで広告キャンペーンが実施され、大いに話題となりました。今年2019年はさらに前進し、株式会社ワンキャリアと協働で「#令和の就活ヘアをもっと自由に」というキャンペーンを行なっています。

(画像引用元:https://www.onecareer.jp/lp/pantene/)

1945年に生まれたパンテーンは、「美しい髪によって、女性が一歩前に踏み出す勇気を与える」というフィロソフィー(パーパス)を掲げています。(参照:パンテーン ~#就活をもっと自由に~“1,000人の就職活動のホンネ”から生まれたキャンペーン 第2弾始動!

日本の就活の風習は、生活者にとってもブランドにとってもまさに「悪」なのです。パンテーンはこうした「悪」に立ち向かうヒーローとして行動し、生活者や様々な企業が参加できる形を通してパーパスを体現し続けています。

確信した正義は暴走しやすく、人を傷つける暴力になる

パーパスを体現し続けるにあたり、次の点には留意すべきなのではないかと考えています。それは、自分たちこそが「正しい行いをしている」と誤認してしまうことです。パーパスの体現・行動に固執するあまり、生活者や社会を置き去りにしてはいけないのです。

西武そごうの「わたしは、私。」や資生堂・インテグレートの「いい女なろう」の炎上は、その典型かもしれません。ヒーローが守るべき人たちの存在を忘れ、我こそが正しいと力を振りかざしてしまう行為は、大義ではなく暴力です。暴力では、生活者から強固な信頼・共感は得られないでしょう。

何十年と愛されてきた企業やブランドでさえ、間違うことがあるのです。先人たちの失敗から学び、正義が正義たり得るためには何が必要なのでしょうか。

ヒーローとは、親愛なる隣人である。常に「正しさ」を考え続けよう。

その答えは映画『スパイダーマン』にヒントがあると考えています。世界中でスパイダーマンが支持される理由。原作者であるスタン・リーは、スパイダーマン=ピーター・パーカーの魅力について次のように語っています。

彼は、無闇に力を行使する存在ではありません。私たちと同じごく普通の人間として、偶然手にした力の行使の「正しさ」に悩み、向き合い続ける存在なのです。だからこそスパイダーマンは世界中の人たちから共感され応援され、「親愛なる隣人」と呼ばれるのだと思います。

映画『スパイダーマン3』でブラック・スパイダーマンが生まれたのは、主人公であるピーターが「正しさ」と向き合い続けることを放棄してしまったためです。復讐を盾に「当然の報いだ」と暴力に身を任せ、守るべき市民や愛する恋人さえ傷つける存在にまで変貌します。

(画像引用元:https://www.youtube.com/watch?v=asX6BeYgEv4)

しかしピーターは自らの過ちに気づき、ブラックスーツを脱ぎ捨てヒーローとしての自分を取り戻します。ピーターの最後の試練は、復讐と暴力を振りかざす二人の「悪」に立ち向かうことでした。

ブランドパーパスを効果的に伝えるコミュニケーション

ブランドパーパスは生活者とブランドを結ぶ、強力なストーリーとなってくれます。しかし、現代の生活者は多様な価値観を持ち、社会のあり方も徐々に変わりつつあります。力の行使に疑問を持たない存在は、必ず誰かを傷つけ社会から阻害されてしまうでしょう。

ブランドはヒーローです。
スパイダーマンのように、生活者と同じ目線で「正しさ」を考え続ける親愛なる隣人こそが、”いいヒーロー” なのではないでしょうか。

ブランドを支援する立場の人間として、生活者の「悪」に立ち向かい続けるブランドが増えて欲しいと願ってやみません。”いいブランド” で溢れる社会は、きっといい社会だと私は信じています。ぜひ、日本をヒーロー大国にしましょう。
偉大なストーリーテラー、スタン・リーの言葉で全2回の記事寄稿を終えたいと思います。
ありがとうございました!


ABOUTこの記事をかいた人

山田 勇人

「ひととひとの間にブランドを。」がモットー。新卒でサムライトに入社。その後マーケティングエージェンシーFICCに転職。消費財ブランドを中心に、ブランドの持続的な成長に寄与すべく、ブランド戦略・マーケティング戦略立案からブランディング・プロモーション施策のプランニング・ディレクションまで担当。2019年よりマーケティングディレクターとしてNEW STANDARDに参加。