「ARUHIマガジン」に学ぶ、オウンドメディア成功に必要な”柔軟な変化”とは【セミナーレポート】


コンテンツマーケティング施策の一つとして定着しているオウンドメディアですが、最近では「このままオウンドメディアを続けるべきか」「今から始める意味はあるのか」といったお悩みを聞く機会が増えています。

そこでサムライトは、1月に開催されたコンテンツマーケティングジャパン2020において、オウンドメディアの価値やあるべき姿を改めて考えるセミナーを企画。

「事例に学ぶオウンドメディアの将来設計。100万UUを抱えるARUHIマガジンの新たな挑戦」と題した本セミナーでは、サムライトが支援する「ARUHIマガジン」を事例として取り上げ、いかにしてこの規模まで成長してきたのか、その意外(?)な事実とともに、オウンドメディア運営における悩みを解決するためのポイントなどをご紹介しました。

これからオウンドメディアの立ち上げを計画されている方にも、運営するオウンドメディアを今後どうすべきか悩んでいる方にも役立つヒントが満載のセミナーの様子をお届けします!

成功と失敗が二極化しているオウンドメディア市場

池戸:まずはオウンドメディアを取り巻く環境を簡単に整理してみます。

去年の8月頃に「続々消えるオウンドメディア。人気記事もあるのに閉鎖される理由は」といったキャッチーなタイトルの記事が注目を集めました。具体的には「Rettyグルメニュース」や「みんなのごはん」などの人気オウンドメディアが閉鎖したことからこうした論調が盛り上がったわけですが、実態を把握すべく、サムライトがこれまで支援したオウンドメディアから100件をランダムに抽出して運用状況を調査した結果がこちらです。

企業のアセットであるオウンドメディアを止める判断をした企業がここ数年で4割以上いるという点は衝撃的な事実と捉えられると思います。

一方、広報会議のデータによると、オウンドメディアを活用した戦略について「とても注力している」と回答した企業が70%近くあり、別の設問でも60%以上がオウンドメディア運営によるプラスの効果を感じていると回答しています。

以上のことから、成功している企業と失敗している企業が二極化していると言えそうです。

それではここから、成功しているメディアでは一体どのように取り組まれているのか、その裏側をサムライトから支援させていただいている「ARUHIマガジン」を例に見ていきたいと思います。

左:アルヒマーケティング株式会社 ARUHIマガジン編集長 風見 悟 様
右:サムライト株式会社 代表取締役CEO 池戸 聡

3度のリニューアルを経て130万UUを超えた「ARUHIマガジン」

風見様:ARUHIマガジンは、“住まい”を切り口に、一人暮らしから結婚、住宅購入、出産・子育て、リフォーム、老後までの各ライフステージで役立つ情報やコンテンツをわかりやすく発信することで、ARUHIの住宅ローンサービスの利用者獲得を目指しているメディアです。

現在は月間130万UUに達しており、直接・間接含めて、毎月安定的ににサービスへの送客ができるようになっています。

実は2014年に最初のメディアを立ち上げてから3回リニューアルして現在の形になったのですが、リニューアルの度に、発信するコンテンツやKPIを変えてきました。特徴的なのはメディア名やドメインも2回変えてきている点でしょうか。

池戸:当初設定した目的や戦略をそのまま数年間継続させることは必ずしも必要ないんですよね。事業環境もマーケティング環境も変化しますので、それに応じてメディアの役割やKPIを柔軟に変化させていくべきだと我々も考えています。

ARUHIマガジン成長の主な要因

風見様:ARUHIマガジンがここまで成長できた要因と考えられるポイントをいくつかご紹介します。

1. 安定したコンテンツ配信と、外部メディアからの流入獲得

風見様:まずUU数をKPIに定めてからは、コンテンツを1日3本、月に100本のペースで配信することを地道に続けてきています。
さらに、UU数をいかに増やすかを考えたときに、外部メディアからのトラフィックの割合が伸びて来ていたことから、SmartNewsやdmenuといった外部メディアとの連携に注力をしてきました。

池戸:トラフィックをオーガニック検索に依存しているオウンドメディアが圧倒的に多い中で、ARUHIマガジンのトラフィックは特定のチャンネルのみに依存しておらず、うまく分散できているところが特徴ですね。

以前は、一般メディアは企業のオウンドメディアとの提携に消極的でしたが、最近は良いコンテンツを提供しているオウンドメディアであれば連携していくという考えに変わってきました。実際、LINE NEWSなどでも企業のオウンドメディアと連携するケースが増えてきているので、この流れをしっかりと捉えることができた点も成功の要因として挙げられると思います。

2. 記事ごとの最適化

風見様:ニーズ顕在層による検索行動をきちんと捉えるために、住宅ローンに関するコンテンツの多くはSEOを意識した記事作りをして、CVポイントへの送客導線もしっかりと設計しています。
一方、潜在層は外部メディアやニュースサイトから誘導する、といった住み分けをしてきました。

池戸:まずはファネル最下部の顕在層を確実に集客してCVポイントへと送客する装置としてARUHIマガジンを機能させる、という考えでメディア立ち上げ時から実践してきたことが、今の成果や収益につながったと思いますね。

3. 社内編集部体制

風見様:現在社内に4名体制の編集部を設けています。集客担当、編集制作担当、マネタイズのセールス担当、そして全体統括といった形で担当を分けており、毎朝30分のチーム会等でそれぞれのタスクを共有し、目線を揃えて運営にあたっています。

池戸:編集部を自社にしっかり持つという点もオウンドメディアの成否を分けるポイントとして挙げられるかと思います。こうした日々の地道な活動や努力の結果が数字として積み上がっていくのがオウンドメディアの特徴と言えます。

メディアのさらなる成長に向けて

「ARUHIマガジン」がいま直面する課題

池戸:続いては、現在感じている課題について教えてください。

風見様:まず、外部メディアからの流入数のコントロールが困難なことです。メディアによってヒットする記事が違うので、流入数を安定させるのが難しいですね。ただしヒットを狙った記事ばかり作っているとメディアとしての存在意義・提供価値が揺れてしまうので、バランスが必要だと感じています。

また、「住まいとお金」というテーマでは他にも大きなメディアが多くある中で、ARUHIマガジンならではの強みとは何か、ということはしっかり考えて、競合との差別化や自社アセットの有効活用を進めていかなければと考えています。

そしてスキルセットやリソースの不足はいまだに課題です。専門家が編集部にいるわけではないので、現在は足りない部分はサムライトさんやパートナーさんの力を借りて賄っているという状況です。

メディアの役割の再定義に基づく新たな挑戦

池戸:そんな課題と向き合いながら、今後どのようなことに挑戦しようとしているかをご紹介いただけますか?

風見様:まずメディアの役割の再定義を行いました。マーケティング施策としてARUHIマガジンがどういう位置付けで、どんなユーザーに何を届けてどんなアクションを取って欲しいのか、というところを改めて整理したところです。

池戸:ユーザーをファネルの下層へと進めていくために、メディアの役割や機能面を見直すという方針が挙がったのですね。具体的にはどのような施策を考えられているのですか?

風見様:大きく4つあります。
1つ目は、自社の強みを生かすという意味で、アセットをしっかり捉えてARUHIらしさを体現するということです。

2つ目は地域レポーターの活用とコミュニティ化です。ARUHIには16万人の住宅購入者のデータがあるため、そのデータから街をランキングし、識者が監修した「本当に住みやすい街大賞」というコンテンツも展開しています。選ばれた街で活動する地域ブロガーとの連携を図り、より地域の情報を活用したコンテンツを拡充していく予定です。

3つ目は、外部メディアとの連携にはまだまだ余地があると思っているので、そこを拡充させて、より流入を増やしていきたいですね。

そして4つ目は、ナーチャリングにより力を入れていきます。送客につながりやすいメディアを目指すのであれば検討層のみを刈り取る施策で良いと思いますが、もっと拡大していくには、より上流から新たな接点やCVポイントを設定し育てていくという発想を持ってやっていきたいと思います。

オウンドメディア運営にあたって押さえるべき8つのポイント

池戸:以上ご紹介してきたARUHIマガジンでの取り組みを踏まえ、最後にオウンドメディアを運営する上でのポイントをまとめてみます。

まず大事なのは、「何のためにメディアを運営するのか、そして何を伝えたいのか」。
マーケティング活動におけるオウンドメディアの役割や存在意義とは何なのか、そしてユーザーに何を伝え、どんなブランド体験を提供したいのか、を常に問い続けることです。

先ほど風見さんからアセット活用の話がありましたが、オウンドメディアではその事業会社固有の価値に基づく固有の体験を提供するという視点も大切です。あらかじめ「ヒト・モノ・カネ・情報・データ」といったアセットを棚卸ししてから戦略を立てるべきなのですが、そこをしっかり実行できていないケースが多いのが実情です。

一方でマーケティング視点での存在意義と、ユーザーにとって存在意義は必ずしも同じではないので、ユーザー目線において独自の提供価値とは何なのかを突き詰めて考える必要もあります。

そして、どのような指標・期間で計測し、評価するのか。アメリカではコンテンツマーケティングやオウンドメディアは18ヶ月以上の期間を設けて効果を見るべきと言われています。日本では1年未満でまだ効果も正しく判断できない状態でメディアを閉じてしまっているケースも多いのですが、1年以上の時間軸で捉えることが重要になると思います。

またオウンドメディアを継続することはそれなりに大変ですし胆力が必要ですので、予算をどれだけ投下して持続可能な体制や工数や確保できるかも成否を分ける要因となります。体制の構築においては、社長を筆頭に役員やマーケティング本部長などの社内支援者を作ることが実は重要なポイントだったりもします。

そして最後は、ユーザーと向き合いコンテンツを発信し続ける覚悟があるか、です。
一時期のブームに乗るような形でオウンドメディアを始められた企業も多いのですが、オウンドメディアは決して魔法の杖ではありません。長い時間をかけてじっくり取り組んで初めて成功の果実を得られるものです。企業としてそこにコミットするという覚悟が非常に需要ですし、その覚悟がメディアの成否を分ける大きな要因となることを覚えておいていただきたいなと思います。


 

課題に向き合い柔軟に変化することが、継続的に成果をあげる秘訣

池戸の発言にもあったように、オウンドメディアはすぐに成果が出るものではないため、なかなか結果が出ずに焦ってしまったり、諦めたくなることもあるかもしれません。

しかし、様々な試行錯誤やリニューアルを経てここまで成長したARUHIマガジンの事例を通して、”状況に応じて柔軟に、時に大胆に変化すること”が、継続的に成果をあげる上で重要であることが分かりました。

オウンドメディアを運営していると様々な壁にぶつかりがちですが、そんな時はセミナー内でご紹介した8つのポイントについてまずは現状をチェックし、欠けている要素や変えるべきものを整理することから始めてみてはいかがでしょうか?

より多くの企業がオウンドメディアで成果をあげられるよう、サムライトでは、オウンドメディアを運営する際のポイントを見直せるチェックシートをご用意しています。こちらもぜひご活用くださいませ!


ABOUTこの記事をかいた人

SOME MEDIA編集部

サムライト株式会社に籍をおくSOME MEDIA編集部です。みなさんがコンテンツマーケティングを実施する際にちょっとためになる情報をお届けしていきます!Facebookでも随時情報発信していますので、ぜひフォローをお願いします!