自社の商品やサービスを、SNS上で影響力のある人「インフルエンサー」と協力して発信していくインフルエンサーマーケティング。
多くの企業が力を入れているものの、「誰をどんな基準で採用すべきか」「どのように効果検証すべきか」など、多くの課題が見られるのも事実。
そこで、サムライトでは「インフルエンサーマーケティング」にまつわるセミナーを実施。「インフルエンサーマーケティング5つの勘違い」の講演についてまとめました。
目次
パネラー
池戸聡:サムライト代表取締役CEO。2006年に株式会社セプテーニに入社。PCやモバイルのメディア、プランニング部門を経て、その後、スマートフォン関連の新規部門を立ち上げる。
スマートフォン市場の第一線で働くも、世界一周したいという理由で2012年に同社を退職。1年半の世界一周の旅に出る。 帰国後、2014年3月よりサムライト創業メンバーとして参画。現在に至る。
落合匠:株式会社hashout代表取締役。18歳のときにWEBデザイナーとしてIT業界に入り、22歳の時にフリーランスとして活動を開始。 システムプログラムやサーバ管理の技術を習得し、フリーランスとして請負・受託と数社を渡り歩く。
2013年、株式会社PR TIMESに入社。主軸サービスの運営・管理、メンバーのタスク管理を行う。 兼ねてより「35歳で独立する」想いがあり、2017年6月に株式会社hashoutを立ち上げ、代表取締役に着任。
「前提の勘違い」施策よりも目標の設定が重要
池戸:今回は、「インフルエンサー・マーケティング5つの勘違い」について、落合さんと一緒にお話しできればと思います。
落合:よろしくお願いします。
池戸:具体的な勘違いに入る前に、「前提の勘違い」からお話させていただければと思います。
その勘違いが「流行っているからやろう」というもの。インフルエンサーマーケティングは、魔法の杖ではありません。どんなビジネスにおいても、最も大切なのは「施策」ではなく、「誰に何を届けたいのか」をしっかり見定めること。これはインフルエンサーマーケティングでも同様です。
マーケティング施策のトレンドである以上、「やること」自体は決して悪いことではありません。しかし、「誰に何を届けるのか」という本質を忘れないようにしながら、これからのお話を聞いていたただければと思います。
①「ハッシュタグの勘違い」ミドルキーワードの上位表示を戦略的に取る
池戸:それでは最初に、「ハッシュタグの勘違い」についてご紹介します。こちらは落合さんが詳しいのではないでしょうか。
落合:ハッシュタグにおける勘違いとは、「商材に関連するハッシュタグを何の気なしに選ぶこと」です。
ハッシュタグ選定の戦略性について、まだ具体的にイメージできない方が多いと思います。そこで、どのような戦略をもってハッシュタグを選んでいくべきなのかをご紹介します。
良いハッシュタグ選定は「ブランド文脈」「頻度」「人気投稿」の3つを軸に設定されています。
「ブランド文脈の設計」とは、どんなユーザーに見つけてほしいかを設計することです。成人女性向けと女子学生向けの商材では、選ぶべきハッシュタグが変わってきます。
「頻度」と「人気投稿」を考えることは、つまり、ハッシュタグの上位表示を戦略的に狙っていくことです。
検索エンジンのSEOと同じように、投稿数の多いビッグキーワードで上位表示されるのは簡単ではありません。しかし私たちの調査によると、Instagramでは、ひとつのハッシュタグで上位表示されると、関連度の高いハッシュタグでも上位表示される確率が高いようです。
なので、ハッシュタグを設定するときは、本当に取りたいビッグキーワードを1つ、投稿数が少なめのミドルキーワードを複数といった形で設定しています。
池戸:つまり、複合ワードやミドルキーワードを取っていくと、最終的に抑えたいビッグキーワードが上位表示される可能性が高くなっていくと。SEOと同じで、まずは取れそうなキーワードから徐々に取っていけばいいんですね。
落合:全くその通りだと思います。
②「キャスティングの勘違い」質と親和性を見極める
池戸:次に、キャスティングにおける代表的な勘違いをご紹介します。それが、「とりあえずフォロワー数の多い人をキャスティングしたい」です。この勘違いは、フォロワー数=リーチ数、もしくは広告換算額といった発想から生まれてくるものだと思います。
しかし、キャスティングで重要なのは「質」と「親和性」です。
インフルエンサーさんの「資」とは、エンゲージメント率の違いです。数千フォロワーを抱えている方の中でも、エンゲージメント率が1%の方もいれば、10%を超えている方もいます。
もし、インフルエンサーさんへの支払いをフォロワー数ベースにしてしまうと、同じ費用でも10倍の効果の差が生まれてしまいます。
また、「親和性」も大切です。Instagramの大きな特徴である「リアルタイムでリアリティー」に深くかかわってきますね。
落合:仰るとおりです。クリエイティブの世界では、ユーザーに対して、いかにリアリティーを感じさせられるかが重要です。インフルエンサーさんのクリエイティブや世界観が、自社ブランドの商材と一致しているかどうかを検証する必要がありますね。
一方で、複数のインフルエンサーさんをアサインする場合、同じ世界観の方にアサインすると、リーチが重複し、効率が落ちる可能性があります。なので、複数人をアサインする際は、世界観にこだわりすぎないほうがいいかもしれません。
③「投稿時間の勘違い」ハッシュタグ毎のアクティブ時間を狙う
池戸:次は投稿時間の勘違いです。この勘違いには、「何時でもいいよ」か「昼か夜に投稿してほしい」という2パターンがあります。
結論から言えば、狙いたいハッシュタグによって適切な投稿時間が変わります。
落合:ひとつ例を挙げてみましょう。
これはhashoutを使って、「化粧水」のハッシュタグがいつ盛り上がっているのかを可視化したものです。色が濃いほどエンゲージメントが高くなっています。なぜか月曜日だけエンゲージメントが高いですね。
このデータをふまえると、化粧水の投稿をするのであれば、月曜日が良いとわかります。
さらに、ほかの統計データも利用して、ターゲットになる人がアクティブな時間を算出してかけあわせると、より高い効果が生まれるはずです。
④「クリエイティブの勘違い」インフルエンサーに任せる勇気を持つ
池戸:次は「クリエイティブの勘違い」です。代表的な勘違いは、「商品と顔が写っていればOK」というもの。
Instagramでは、ユーザーは「真実や本物であること」にとても敏感です。なので、インフルエンサーさんを活用しても、「やらせ」は消費者の心に届きにくくなります。
企業側がインフルエンサーさんの「投稿をコントロールしたい」気持ちは理解できます。しかし、Instagramの特徴をふまえると、インフルエンサーさんに投稿を任せる勇気が必要なのかな思っています。
落合:投稿をコントロールするのではなく、アサインの段階から、インフルエンサーさんとブランドの世界観がマッチする方を選ぶのがよいでしょう。
ファン層やユーザー層によって適切なクリエイティブが変わってくるはずです。それらも加味した上でアサインすると、インフルエンサーさんのクリエイティブをコントロールする必要がなくなるのではないでしょうか。
池戸:ちなみに、画像や動画でエンゲージメントは変わるのでしょうか。
落合:hashoutのデータでは、動画のほうが画像に比べてエンゲージメントが3倍ぐらい高かったです。
▲画像と動画で、どれだけエンゲージメント数が違うのか一目瞭然。
なので、動画が映える商材であれば、動画でお願いすることが多いです。Instagramではストーリーが人気なので、可能であれば動画もしくはストーリーで投稿するのが良いと思います。
⑤「効果測定の勘違い」エンゲージメントと態度変容を測る指標を定める
池戸:最後に、効果測定の勘違いです。効果測定では、なにかと「いいね数」や「広告換算額」を指標にしてしまいがちです。
しかし、本来測定したいのは、エンゲージメントやビジネスインパクト、消費者の態度変容だと思います。
はたして、一体これをどう調査するのか。みなさんが悩まれている問題だと思います。
落合:施策を打った当日の投稿数が伸びたり、エンゲージメントが伸びたりするのは、効果測定がしやすいです。しかし、このデータには施策に影響されていないデータが混ざっている場合が多いです。
おすすめの効果計測は、自社オリジナルのハッシュタグを作ること。オリジナルハッシュタグを作って、その推移を追うと、エンゲージメントがどれだけ発生しているのかを把握できます。
このように指標を明確化すると、その施策がユーザーやブランドに対してどんな影響を与えているのかを計測できますね。
SNSの有効活用がビジネスに直結する時代に
池戸:今回は、「インフルエンサーマーケティング5つの勘違い」についてお話してきました。
今、ビジネスがまさに変化している時代です。SNSでファンとの接点を構築できるようになるかどうかが、これからのビジネスに直結してきます。みなさんのブランドの方やメーカーの方には、ぜひ積極的にインフルエンサーマーケティングに取り組んでいただければと思います。
本日はありがとうございました。
落合:ありがとうございました。