女性向け新興webメディアがPVを伸ばす中、「しあわせ」をテーマに読者とのつながりを重視するメディアへと方針転換を行ったANGIE。
インタビュー前編では「コンテンツ編」として、方針変更の経緯と具体的な運営について紹介した。
今回お届けする後編は「ビジネス編」。
PVを追わないメディア運営でいかにして収益化を実現させるのか、その戦略をエスタイル代表の宮原智将氏とマネージャーの上野亜紗子氏に聞いた。
音楽業界の現状がwebメディア収益化のヒントに
宮原:ここ最近感じているのは、「webが軽くなった」ということです。バナー広告のクリック率が下がり、そのPV単価は以前の1/10程度まで下落しています。頑張ってメディア運営をしてPVを稼いでも、得られる広告収益としては天井が見えてしまっています。そのため、実際にANGIEでは一切バナー広告を入れておらず、タイアップ広告の販売を行ってきました。
ただ、タイアップでも上限が見えてきているのが正直なところ。
今回の方針転換によって我々が目指すのは「ほぼ日」さんのビジネスモデルです。つまり、リアルの商売を取り込みたいと思っています。
膨大なPVは無くても非常に濃いサービスを運営し、メディアを通じて物販や商品のOEM生産を行うことを目指します。
御社としては、メディアコマースが次の一手だということですね。
宮原:はい。ちなみにwebメディア収益化のヒントは、最近の音楽業界のビジネスモデルにあるのではないかと思っています。様々な環境変化によってCDが売れなくなった現在、ミュージシャンはコンテンツの入り口としてライブで価値を提供していますよね。
webメディアのコンテンツもあくまで入り口として捉え、音楽業界のライブにあたる部分をリアルなビジネスで作っていくことを考えています。
宮原:そうですね、そこで本当に重要なのはPVではなく、実際にライブへ参加してくれるお客さんを何人連れてこられるかだと思っています。
よくある「◯◯5選」といったような軽いコンテンツでPVは稼げても、果たしてライブに行こうと思ってもらえるのかと言えば、疑問ですよね。
そこで、PVについてはいったん忘れてみようと。現状では、たとえPVが下がってもぐっと我慢しています。
宮原:評価軸としては、ライブの動員者数ですね。実際のリアルなビジネスへの申込数をKPIとしています。
それに伴い、単純に「バズる」だけの記事は評価しないようにしました。例えばキュレーションサイトでバズっている記事を見ても、どのメディアが提供している記事なのか、ユーザーさんが覚えていないことがありますよね?我々が今後取り組むような、ストーリーを重視したコンテンツタイアップやECが、ウェブ上で大きくバズるというのは考えにくい。そうなると、もはやPVが必要以上に多いことにはあまり意味が無いと考えています。
モノではなく、コトを売るメディアへ
宮原:値段ではなくて、ストーリーでモノやコトが売れるECのモデルを実現したいと思っています。
具体的には、まず第一弾としてANGIEで人生相談のコーナーを担当して頂いている美創家の橘瞳子先生による「交換日記」サービスを開始する予定です。情報のやりとりがものすごく簡単になった現代だからこそ、心の通ったリアルでのやりとりに価値があるのではと考え、実際に日記を郵送します。小さい頃に交換日記を行って、手元に届くワクワク感を経験した人も多いはず。何だか懐かしい感じがしますよね。
また、同じく橘先生による人生相談のリアルイベントも開催する予定です。
実際に弊社の社員に対して、定期的に橘先生との相談会を行っているのですが、メンバーが口を揃えて「意識が変わった」「前向きになれた」と言っています。
例えば、「なぜ会社に身だしなみを整えて出社しなければいけないのか」というテーマに対して、経営者である私から社員に伝えてもなかなか伝わりません(笑)。それを、本人に伝わる形で、かつ愛情をこめて伝えて下さる。こういった、心の通ったやりとりを通じて読者一人ひとりの「しあわせのカタチ」を提供できればと思っています。
宮原:そうですね。例えばファイナンシャルプランナーの方と一緒に「家計簿の赤ペン先生」のようなサービスを提供していく予定です。他にもスタイリストの方などによるコンテンツ提供も考えています。
女性の悩みを解決するメディアへ
宮原:ANGIEを通して悩みを解決できるようなヒントを読者にご提供し、元気を出して頂くような関係性を目指したいと思っています。
はじめは、「ANGIE」というサイト名にあるように、強くてキラキラした女性をイメージしてメディアを作りました。ただ、運営をしてわかったことは、「30代女性の悩みは非常に大きく、根深い」ということです。キャリアや人間関係などで悩んでいて、それはちょっとしたライフレシピでは解決できない、大きな悩みでした。キラキラした女性をアイコンにANGIEを作ろうと思ったのですが、実際には読者の多くが、キラキラする以前のステップでつまづいてしまっていたのです。
ANGIEが提供するコンテンツを心の支えにして頂いていたり、「元気をもらっています」という読者からの声を頂戴する中で、我々だからこそ提供できる価値を考えた結果、「しあわせ」をテーマに読者とのつながりを深めていくメディアにしていこうと。それがANGIEらしさ、他のメディアには無い特徴になっていくと考えています。難しいテーマなので、試行錯誤の日々ですが、なんとか元気にやっていきたいと思います。
(somewrite編集部)