スタートアップに特化した情報や考察を発信するブログメディアThe Startupの梅木雄平がsomewriteのリリースを記念して、様々なメディアの立ち上げに関わってきた人を取材する「メディアメーカー」という連載を展開する。
梅木雄平 株式会社The Startup 代表取締役
Webサービスの新規事業やマーケティングのプランニング、各種メディアでのライティングを手掛ける。スタートアップ関連メディア「The Startup」を主宰。ネット業界の裏話を綴る有料オンラインサロン「Umeki Salon」は会員200名を突破。
ハローエブリワン。梅木だ。
初回は過激なタイトルやペナルティエリア内なコンテンツが満載の女性向け恋愛総合メディアAMの編集長である鍬のどかさんと副編集長の金井茉利絵さんにAMの生い立ちを聞いた。
AMは私もはあちゅう女史の連載などは毎週読んでいるし、あまりにもエグい内容で面白いので、アプリもDLしてたまに閲覧している。
※ちなみに本日、1000万PVを突破したことがAMから発表された。
(女性向け恋愛WEBマガジン「AM」月間1,000万PVを突破!)
コンセプト:出会いに対して消極的な女性を後押しする
梅木:AMはいつ頃、どんなきっかけで立ち上げたのですか?
金井:2012年2月に立ち上げました。立ち上げたきっかけは運営会社のDiverseのメイン事業であるマッチング事業=恋愛について、もっと女性の意識を高めようというのが目的でした。
鍬:オープン当初は今と編集メンバーも違ったため、恋愛や結婚に今ほどフォーカスしておらず、幅広く女性向けのライフスタイルを紹介するメディアでした。
2012年9月に私が編集長に就き、金井とともに現在のような恋愛に特化したサイトへと変更しました。
梅木:ピボットされていたのですね。恋愛や結婚を主要コンテンツとして扱うメディアは増えていますが、AMはどのようなコンセプトなのでしょうか?
「非恋愛時代に未来はあるのだろうか」というキャッチコピーはなかなか衝撃的です。
金井:今は彼氏がいない女性が5割を超えている時代です。いい恋愛をしたい人はたくさんいると思うのですが、男女ともにそれがなかなか行動には結びつけることができないのが現実です。
鍬:世の中では恋愛の話ばかりしていると、馬鹿にされてしまう風潮があるように思えます。結婚をしたいと思っていても、結婚の手前にある恋愛の悩みを周りに打ち明けられずに一人で悩んでいる方も多いですよね。そんな方たちの力になりたいと思ったのがきっかけです。恋愛に対してもっと真剣に考える場や、恋愛の価値を高めるようなメディアをつくりたいと考えました。
AMは出会いに対して消極的な女性を後押しするようなメディアを目指していた。直接的なセックスの話題なども多いが、あくまで恋愛に対して真剣なコンテンツを提供している。激しすぎる本音を押し出したいわけではなく、あくまで女性を後押したいというのがメディアコンセプトのようだ。
一般的にタブー視されていることに切り込むがゆえにオリジナリティが出る。私はすっかり心を鷲掴みされてしまい、電車の中で1時間ほど読み耽ったこともある。
酒池肉林の恋愛メディア市場ポジショニングマップ
AMが属する恋愛メディア市場はかなり多くのプレイヤーが参加している。通称・梅木マップによるとこう分類される。
鍬:AMは性的に過激な記事もありますが、エロとしてPVを取りたいわけではなく、あくまで女性の悩みに真摯に応えたいという想いで配信しています。性的な表現の入ったコラムもありますが、真面目です。
梅木:たしかに、エロい内容ではありますが、ストイックさが記事の節々から感じられますね。
金井:性に関するコンテンツも力を入れているので、女性向けメディアといってもユーザーは男女比半々くらいかと思っていましたが、実際は7割が女性読者。真面目なエロが女性ユーザーの皆さんに支持されているのであれば、すごく嬉しいです。
同様のセグメントに女子SPA!などもあり、筆者はこっそり読んでいるのだが、女子SPA!と比べてAMはコピーライティングがウィットに富んでおり、ユーモアを感じ、読んでいてハマってしまう。ちなみに、筆者のGunosyにMenjoyが載っていない日はない。(それほどGunosy上でMenjoyばかり読んでいるということだ!)
「素敵ビッチ」などのAMワードを紐解く
梅木:「ノマドセックス女子」や「素敵ビッチ」などAM独特の用語も出てきますよね。ノマドセックス女子などは、フリーランス経験のある私にとっては身近な喩えで捉えやすくて笑えました。「素敵ビッチ」はサイト内ではタグになっているほどです。「素敵ビッチ」とは何かご説明いただけますか?
鍬:「素敵ビッチ」はAMで連載を持っているOLIVIAさん発祥の用語です。
OLIVIAさんはコラムの中で、“恋愛もセックスもポジティブに楽しんでいる愛され上手な女性のこと。恋人が途切れないだけでなく、同性の友人も多く、人間力の高い女性。”と説明されています。(http://am-our.com/sex/96/4746/)
ただ性に対してオープンになるということではなく、恋愛や性をポジティブに楽しむようになることを推奨したいと思っています。
金井:最初は、とにかく性を激しくオープンにすれば、女性のためになるように思っていたんです。
でも、過激にすればいいものではなくて、実は女性にも性欲が強い人もいれば、弱い人もいて、嫌悪感すらある人もいる。女性とひとくくりにせず、性に関する捉え方によってそれぞれの悩みがあるので、それに対応する記事制作ができればいいなと考えています。
こうした媒体独自のワードを共通言語として読者同士がその媒体について語ることで、コミュニティ感を醸成できると感じる。私が愛読している藤沢数希先生の週刊金融日記でいう「非モテコミット」で読者同士がわかり合える感覚と似ているし、The Startupといえばポジショニングマップがないと!という読者と同じような感じだ。
AMのペナルティエリア的なコンテンツ製造方法
梅木:AMの編集方針や記事ネタはどうやって考えているのですか?
鍬:大きなテーマ企画は、編集部の女性4人に、男性の上司とアドバイザーの方を交えて決めています。女性だけではどうしても悩みに対してのアドバイスが偏ってしまうので、男性はどう思うのか?という視点も大事にしています。
恋愛は、女性だけまたは男性だけが頑張ってもうまくいくものではないので、お互いの意見をくみ取ったものを配信できればと思っています。編集部員の恋愛の状況なども、ヒントになることがあるので、会議の中で過去の恋愛の話などをすることもあります。
金井:それぞれに得意な方向があるので、ひとつの意見をああでもないこうでもないと話し合うと、一見議論しつくされた課題に見えるものでも新しい企画になることが多いので、チームワークの大切さを感じます。AM編集部で、合コンにいくこともありますね。
あとはもちろんですが、著者の方たちのアイデアと惜しみない協力が本当に大きいです。スタート時はWeb媒体ということもあって、協力してくださる著者さんを見つけるのが大変だったので、現在協力してくださっている方には、感謝してもしきれないです。
AM編集部とThe Startupの合コンについては、近日中にThe Startupメルマガで詳細が展開される。はずだ。
梅木:記事ネタがかなり過激な印象で、ペナルティエリア内で勝負を続けるThe Startupでもこれは書けない…と思うものも多々あるのですが、運営会社から突っ込まれたりはしないのですか?
鍬:運営も弊社で行っているので、突っ込みは社長になるのですが。社長からはむしろ、「ぬるいんじゃない?もっと本音の部分に切り込むように」と激励の言葉をもらっています。私たち自身が知りたいと思うことや、耳を塞ぎたくなるけど聞かずにはいられない本音を記事化するようにしています。
薄っぺらいモテテクではなく、恋愛をする上で必要になってくる生の情報を発信できたらと思っています。私自身、恋愛するのも好きですが人の恋愛話も好きで。そうした生々しいインプットが仕事の糧になっています。
金井:さすがにこのインタビュー記事で言うのは憚られますが、騎乗位特集とかやってみれば?などと提案されることもありますね。これは書かないでくださいね!
梅木:今後、AMが目指す方向性を最後に教えて下さい!
金井:女性の悩みを解決するコンテンツを提供するメディアでありたいと思っています。最近、読者会を開催しました。プロジェクターに映して、この記事についてどう思ったか?などを議論したのですが、とても盛り上がり、その時いただいた意見がすごく活きて考えも変わったんです。この方たちを含めた読者の皆さんの悩みを少しでもなくせればいいなと思っています。リアルイベントも今後は増やしていければと。
鍬:性や恋愛の悩みを抱え、不安に感じている女性たちの支えになるような取組を行っている他の商品やサービスの方とご協力させていただきたいと考えています。恋愛にプラスになる、より大きなメッセージを発信し、女性はもちろん、多くの人の幸せにつながるようなメディアにできたらと思っています。
個性的な編集部員が自らの実体験を元に展開する本音の恋愛メディアAM。今後もエロ真面目で言いたいことも言えない反町隆史もビックリなコンテンツを量産して我々を虜にし続けてくれるであろう。
鍬:梅木さんって怖そうな方だと思っていたのですが、会ってみるとそんなこともないんですね…♡
鍬 のどか
武蔵野美術大学油絵学科卒業。出版社を経て、2012年NHN Japan株式会社(現LINE)入社。恋愛サイト「AM」(http://am-our.com/)の編集長に就任。
現在は2013年12月LINEより分社化した、株式会社Diverseにて「AM」を運営。
オススメの記事は、連載「はい、こちらジェーン・スー チャット相談室です。」
このコラムでは、ジェーン・スーさんと一般の相談者さんが実際に交わした、2~3時間に及ぶスカイプでの会話を掲載しています。
女性特有の悩みにとことん向き合い親身にアドバイスする、ジェーン・スーさんの姿に胸を打たれます。
金井 茉利絵
青山学院大学文学部卒業。農林中央金庫、編集プロダクションを経て、2011年株式会社ライブドア(現LINE)に入社後、「AM」編集部に配属。現在は2013年12月LINEより分社化した、株式会社Diverseにて「AM」を運営し、副編集長に就任。
オススメの記事は「毒吐きはあちゅうのアラサー恋愛入門」です。
焦ったり傷ついたりしているお年頃の女子のもやっとした悩みを、本当に毎回みなさんの心に正確に刺さる言葉で紐解いてくれて、自分のサイトながら頷きすぎてます。さまよい気味の女性にぜひ読んでほしいです。