SCSKグループの「CAMP」をご存知だろうか。
CAMPは、SCSK株式会社が展開する社会貢献活動の1つ。こどもたちの「共に創る力」をテーマとしたワークショップの開発と実践、普及活動を行っている。
CAMPのワークショップでは、学校教育とはまた違う、創造性を重視した学習環境が用意されており、こども自身が楽しみながら自分に合った「創造のヒント」を見つけ、コミュニケーションを通じ「共に創る力」を育んでいくことに重点を置いている。
CAMPのワークショップ活動自体は2001年4月にスタートしており、2015年で15年目を迎える息の長い社会貢献活動だ。
(https://www.scsk.jp/)■ 事業内容ITに関するすべてのサービスで、ビジネスの新価値創造とグローバル展開をサポートします。システム開発からITインフラ構築、ITマネジメント、BPO(Business Process Outsourcing)、ITハード・ソフト販売まで。ビジネスに求められるすべてのITサービスを、フルラインアップで提供します。(出典:SCSK株式会社より)
今回は、「CAMP」の最新ワークショップ「CAMPオトダマ○ワークショップ(仮称)」で、具体的にこどもたちがどのように学んでいるのか、サムライト編集部にて密着取材させていただいた。
未来をつくるSCSKのワークショップ「CAMP」
開催日:2014年12月23日
運営:SCSK株式会社
共同開発:東京大学大学院情報学環 山内研究室、安斎利洋氏
会場:CAMPスタジオ(SCSK晴海オフィス)/東京都
対象学年:小学4年生から中学3年生まで
参加人数:11名
公式サイト:http://www.camp-k.com/
目次
【概要】CAMPオトダマ○ワークショップ(仮称)
「CAMP」はこれまで多数のワークショップを展開しているが、今回の「オトダマ○ワークショップ(仮称)」は、新たに東京大学の研究室と産学連携で開発しているプログラムになる。今後はトライアルを重ね、より本格的なワークショップにしていく予定だ。
このワークショップの目的は、音の流れをプログラムすることができる独自ソフト「オトダマ(仮称)」を使い、全体を通してプログラミングの基本的な考え方や、創造性やコラボレーション能力を育むことにある。
こどもたちは、会場の中や屋外で「面白い!」と思った音を録音してきて、それをパソコンに取り込んで音を切ったり繋げたりする。最終的に1つのユニットで作品に仕上げるという流れだ。
ワークショップで使うソフトシステムは安斎利洋氏(システムアーティスト)が開発し、ワークショップのプログラムを安斎勇樹氏(東京大学大学院情報学環 特任助教)が中心となり、CAMPのスタッフと話し合いを重ねながら開発したもの。
▼ 安斎利洋
1956年東京生まれ。システムアーティスト。1985年ごろからCG作家として活動。日経BP社「日経コミュニケーション」の表紙を6年間担当した。(1991-1996)
著書:「パーソナル・コンピュータ・グラフィックス」(1986/美術出版社)他。武蔵野美術大学基礎デザイン学科、東京大学大学院情報学環、早稲田大学文化構想学部、非常勤講師。
(ポートフォリオサイト:http://renga.com/anzai/)
▼ 安斎勇樹
1985年東京都生まれ。東京大学大学院情報学環特任助教。商品開発、人材育成、組織開発などの産学連携プロジェクトに取り組みながら、創発的なコラボレーションを促進するワークショップの実践と評価の方法について研究している。
主な著書に『ワークショップデザイン論-創ることで学ぶ』『協創の場のデザイン-ワークショップで企業と地域が変わる』がある。今回の「CAMPオトダマ○ワークショップ(仮称)」は父である安斎利洋氏とタッグを組むことで実現した。
(ポートフォリオサイト:http://yukianzai.com/)
STEP1:自己紹介
まずは、ファシリテーターを交えて自己紹介が始まる。
簡単なプログラムの説明を行い、
箱に入っているボールで、その日こどもたちが誰と一緒にチームを組むのか、「ユニット」が決まる。ここで1ユニット2人~3人の計4つのユニットが出来上がった。
今回のワークショップは午後1時から開始され、夕方5時までのプログラムだ。
STEP2:録音のやり方
今回は自分が面白いと思った音を録り、ワークショップ用に開発されたソフト「オトダマ(仮称)」を使い、ユニットで形にするミッション。
STEP2のこちらでは録音する方法をファシリテーターから学んでいる。
STEP3:音を録りに行く
準備ができたら次は「音」を録りに行く。
▼ ワークショップのための材料がたくさん用意されている。
ユニットの1人は室内の道具を使って音を録り、
同じユニットの別のメンバーが屋外に音を録りに行く。
STEP4:PCに取り込む
音を録り終わったら、会場に戻り、ユニットごとに別れてノートPCに音源を取り込む。
もちろん、こどもたちが分からない箇所はファシリテーターもフォロー。
STEP5:一次制作
PCを使って、制作に取り組んでいくこどもたち。
※ 下記が共同開発者である安斎利洋氏の実際に作ったオトダマ(仮称)制作動画。
STEP6:音を共有→交換
ユニットで自分がどのような「音」を持っているか、Dropboxを使って共有。
STEP7:二次制作
ファシリテーターが制作のコツを見せながら、二次制作へ。
STEP8:再度、音を共有→交換
「どうやってユニットの作品にしようか……」
発表に向けてユニットでそれぞれが話し合う。
STEP9:仕上げ
ファシリテーターが指示していないにも関わらず、全てのユニットが1台のPCにかじりつくように仕上げに入った。
ちなみに、今回の作品の発表スタイルは全部で5つ。
1: それぞれ制作した音を順番にならす
2: 1人1人の「オトダマ(仮称)」の間をつないでアレンジ
3: それぞれの「オトダマ(仮称)」を同時にならす
4: ユニットで新しい作品をつくる
5: その他
上記5つの中で、どのような作品スタイルで発表するのかを時間内でユニットで決めた。
発表
各ユニット発表の時間。実際に作品の音を鳴らして発表する。
今回はファシリテーターからの質問に答えたり、もっと「ソフトに音程が欲しい」などの意見が出た。
(写真:ソフト機能の質問に答える共同開発者の安斎利洋氏)
また、以下が実際のこどもたちの感想だ。
- 最初は、説明を聞いて「ん?」となっていたけれど、やってみたらとてもおもしろかったです。つかれた
- エラーがいっぱいでたけど楽しかった。友達少し出来たよ。
- つかれたけどたのしかった!
- なんかぐちゃぐちゃになったりしてたいへんだった。
- 前も来たことがあったけど、今回のほうが楽しかった。友達たくさん!
- おとダマたのしかったです。(エラー)とっても、たのしめるじかんでした!
- むずかしかったけど、たのしかった。
- はじめてさんかしたけど、たのしかった!
CAMPが大切にしている「創造性」
■ 今回のワークショップのフロー
CAMPのガイドブックに掲載されている、内容の一部を紹介しておこう。
・創造性というと科学者や芸術家の専売特許のようなイメージがありますが、ちょっとした工夫を考えることは誰もが日常的に行っています。(中略)創造性は遺伝的に選ばれた一部の人のものではなく、方法を身につければ誰もが創造的になれる可能性を持っているのです。
・最近の研究によって、創造的活動はグループの中で行われていることが明らかになっています。一人の名前で発表された成果物であっても、その裏側には多くの試行錯誤があり、ブレークスルーをもたらすアイディアの種は多くの場合異領域の人との対話から生まれます。創造的になろうと一人でがんばるよりも、創造的活動を志向する人々が集まる場所に身を置くことが大事だということです。
(引用:『CAMP Children’s Art Museum & Park ブック』 東京大学大学院情報学環 山内祐平教授/編集:新谷美和 発行日:2012年3月30日)
いまのこどもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就く
2011年8月、アメリカデューク大学の研究者であるキャシー・デビッドソン氏が「小学校に入学したこどもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」とニューヨークタイムズ紙のインタビューで語った。
■ 参考
The NewYork Times「Education Needs a Digital-Age Upgrade」
「今は存在していない職業に就く」ということは、新しいサービスや職種がどんどんこれからも生まれていくということ。PCのなかったかつては「Webデザイナー」すら存在しなかったのだから、当然の流れと言えよう。
サムライト編集部が独自に調査した結果、遠くない未来でIT化が進み、人力でやっていた仕事がどんどんロボットやコンピューターに奪われることが分かった。
特に飲食店ではオーダー係がタブレットPCにすり替わっているなど、既にその片鱗が見えている。
また、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口」によると今後も日本の人口は落ち込み続けると予測されており、各地方の電鉄会社では1日3本来る電車が1本に減る見込みだ。
こどもに求められる「21世紀型スキル」
ニューヨークタイムズ紙の「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」という発表を受け、教育専門家の間でキーワードになっているのが「21世紀型スキル」だ。
21世紀型スキルは、世界の教育関係者らが立ち上げた国際団体「ATC21s(The Assessment and Teaching of 21st-Century Skills」が提唱する概念である。変化の激しい時代を生き抜くために欧米で広がりつつある概念だが、まだまだ日本における認知は低い。
まとめ
今後ますますエンジニアの需要が高まり、職場に技術職が枯渇する。IoTも台頭してきた。今後スーパーや百貨店などは、人口が減ることで苦しい戦いになり、大学数も減るだろう。テレビが24時間放送ではなくなる時代も近い。
現在存在しない職業に、私達大人がこどもたちにできることは一体何だろうか。
少なくとも、本当にこどもたちの将来を考えるならば、このCAMPの活動を手本にクリエイションする人材教育を根本から再設計することが必要だと言える。
参考文献
The NewYork Times「Education Needs a Digital-Age Upgrade」
現代ビジネス “人口4300万人”ああニッポン30年後の現実【第2部】それはアッという間の出来事だった。これからの30年で「消える仕事」「なくなる職業」
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」
国際団体「ATC21s(The Assessment and Teaching of 21st-Century Skills)」
Microsoft in Education「Assessment and Teaching of 21st Century Skills (ATC21S)」
(画像&執筆:鈴木 美雪/サムライト編集部)
公開日:2015/02/25