「こどものヒトサラ」ママ編集長熊本薫氏に聞く、ママ達をストレスフリーにする3つの極意


(「こどものヒトサラ」編集長熊本薫さん)

“BALANCE” by somewrite では、【Web×女性】を切り口に、サービスの開発秘話や彼女たちが持つオリジナルの価値観を紹介していく。

連載第ニ回目となる今回は、株式会社USENが運営しているママ向けグルメサイト、「こどものヒトサラ」の編集長であり、自身も働くママである熊本薫さんにサービス開発の方法をインタビューさせていただいた。

まず、読者の方々にはGoogleで「ママ会」と検索していただきたい。おそらく上位に「こどものヒトサラ」が出てくるのではないだろうか。

(乳幼児ママに役立つ「食」の総合情報サイト「こどものヒトサラ」)

USENには元々「ヒトサラという「料理人の顔が見える」をコンセプトにしたグルメサイトがあるのだが、今回ご紹介する「こどものヒトサラ」は、乳幼児を育てる母親に役立つグルメと育児情報をかけあわせた、ママに便利なWebサービスだ。

「ヒトサラ」でママ向けコンテンツ「こどものヒトサラ」を立ち上げた熊本薫編集長にWebサービスの極意を迫る。

サービス企画の発端

- それでは、「こどものヒトサラ」のサービスを企画したきっかけを教えていただいても宜しいですか?

熊本:はい。独身時代、私は食について鈍感であまり深く考えていませんでした。ただ、結婚してこどもができるとそのままじゃいられなくて。ママになって、まずぶつかった壁が『食』だった。大人用と離乳食用で2パターン作らないといけない。大人が普通に口に入れるものを離乳したばかりのこどもには与えられないですし、毎日夕方4時になると「夕飯どうしよう」って呟いていました。

熊本さん自身も、独身時代は一般のビジネスマンのように、夜はお酒を嗜み、お菓子を食べる生活を送っていた。

熊本:同僚からも「薫さんって、夕方4時になるといつも夕飯どうしようって言いますよね」って言われて(笑)。達成会の時、事業部長に「ママ向けのコンテンツを作りたいんです!」って相談したら、意見が通り、「ヒトサラ」内にママ向けのコンテンツ「ママ会特集」を企画することになりました。

1.「こども」にも「ママ」にも本当に良いコンテンツを

熊本:このページではママが使えないお店を載せてもしょうがないんです。本当にママたちが使えて、ママたちがオススメしているものしか載せていません。

熊本さん曰く、以前の「ヒトサラ」ではママたちが子連れで使えるようなお店を検索することができなかったという。また、熊本さん自身もこどもを持つ母親として飲食店探しに苦労していた。しかし、同じ悩みを持っていたのは熊本さんだけではなかったのだ。保育園のママ友達もこどもに与える「食」について悩んでいた。

『こんなにもママたちが自分と同じ悩みを持っているなら、自分の会社で作りたい!』と思ったことがきっかけだったという。

- 先ほどお話にあった『離乳食』というと、具体的にどのようなことが課題だったのでしょうか?

熊本:まず、「作り方が分からない」じゃないんです。もう「食材の選び方」から分からなかった。こどもに与えるんだから、栄養があるものの方がいいし、なるべく新鮮な食材を使わないと!って。

- なるほど。食材の選択からもう課題だったわけですね。

熊本:ママの課題って本当に色々あります。編集部では「子連れでランチにおすすめのお店」に載せる時、10項目程度の確認項目を用意しているのですが、10項目中どれくらい条件が満たされているかを判断基準にして、基準を満たしていないものは掲載していません。

掲載の基準について、内容のごく一部をうかがうことができた。

 

<基準項目一例>

・ベビーカーごと入れるお店か

・キッズメニューや食器・ハイチェアがあるか

・国産食材や有機野菜などを使用しているか

・離乳食は持ち込めるか

・こどもが遊べるスペースがあるか

・頼めばミルク用のお湯は提供してくれるのか、他

などなど、ママたちから実際に行っているお店を紹介してもらい、熊本さんがママならではの目線で一軒一軒お店に必要事項を確認していく。場合によっては直接お店へ行き、本当にママが使えるお店なのか判別する。条件をクリアし、「ここは本当にママたちにおすすめできる!」と熊本さんが感じた店舗が晴れて掲載となる。

「本当にママたちが使えてママたちがオススメできるものしか載せていません」と言い切れる根幹はここにあったのだ。



店を訪れるママへ』/子連れのママ用にオススメポイントが分かる

2.毎日のご飯が課題

- 「こどものヒトサラ」には、『朝・夕1ヶ月アレンジレシピ』というページもありますよね。グルメサイトで大々的にレシピを載せることは珍しいと思うのですが、この開発の意図はどのようなものなのでしょうか。

04

熊本:これも自分の経験がきっかけだったんです。毎日夕方4時に呟いてしまうほど、その日の晩御飯を考えることがストレスで。大人用の食事をそのままこどもに与えるわけにもいかないしどうしようって悩んだときに思いついたコンテンツがこどものご飯を軸に考えた『朝・夕1ヶ月アレンジレシピ』でした。

読者のためにご紹介させていただくと、『朝・夕1ヶ月アレンジレシピ』というのは、「こどものヒトサラ」に盛り込まれている、幼児(こども)向けのレシピが週単位で1ヶ月分わかるというコンテンツページだ。

熊本:この『朝・夕1ヶ月アレンジレシピ』は忙しいママのために献立で悩むことがないように編み出したサービスです。こども用に簡単に作れて節約でき且つ美味しいものだけを掲載しています。また、普通に料理レシピを紹介するだけではなく、作った夜ごはんメニューを朝ごはんにアレンジできるような工夫や大人向けアレンジを提案しています。


『炊飯器で簡単!海南チキンライス』

子を持つ母は忙しい。特に朝は1分1秒でも時間が欲しいはず。ママならではの視点で創り出せる工夫がママに支援される理由の一つだ。

熊本:レシピを作ってくれる料理家さんにも『なるべく3ステップくらいで短く作れて美味しいもの』をリクエストしています。時間もサイトを見ていただいたら分かる通り、15分~20分で完成できるものが基本です。さらに、こども用を作ったあとに『大人用にこのひと手間!』で作った料理を大人用にアレンジすることが可能です。

工夫はこれだけでは終わらない。レシピに連動した『お買いものリスト』があることもママにとっては大助かりだ。



レシピ連動型の『お買いものリスト

レシピページにある『お買いものリスト』は1週間のうちに何を買えばいいのか全て分かる、まとめ買い特化型の食材リストになっている。大人2人+こども1人分を目安としており、時短のための下ごしらえアドバイスも掲載されている。

3.ママだって学びたい!

- 他にも「こどものヒトサラ」には『離乳食Q&A』や『食育レポート』のコーナーがありますよね。どのような狙いがあるのか教えていただいてもいいですか?

熊本:まず、『離乳食Q&A』はとにかく離乳食をあげている母親に向けて、一つでも多く悩みを解決させてあげたいと思い、企画を立ち上げました。食べムラがあったり、食べている時に暴れてスプーン投げちゃったり。同じ悩みをまず離乳食を経験したママに聞いて、さらに医師・保育士・管理栄養士に答えてもらっています。医師に聞くのか、保育士に聞くのか、管理栄養士に聞くのか、それぞれ悩みの受け取り手によって答えは変わりますからね。

- 確かに。立場が違えば、アドバイスのニュアンスが個々に異なりそうですね。

熊本:周りのママから聞いた離乳食の悩みを、どんな専門家に聞いたら答えてくれるのか私が揉んでカタチにしています。また、顔出し可能な読者ママモデルの人たちに声をかけ先輩ママとして、実際にやった工夫や経験談を紹介しています。


月齢別!離乳食Q&A

熊本:『離乳食Q&A』でキーとなっている事柄は、医師や保育士、管理栄養士などの専門家の他、先輩ママのアドバイスも載せることで「専門家×ママ」の二重の提案ができている点です。「ヒトサラ」では、「顔が見えて安心できること」が前提なので専門家や先輩ママは全員顔出しをしてもらっています。

- アレルギーを持つ乳幼児や離乳食拒否……、こどもの食事に関するママの悩みは尽きないですね。ちなみに「こどものヒトサラ」全体では、熊本さん周辺のママさんたちを含め、どれくらいの人数が関わっているのでしょうか?

熊本:だいたい、コンテンツ全体で70人前後くらいです。ママさんたちの協力があってのコンテンツです。本当にありがたいですね。

- ということは、70人前後の関係者と1人でやり取りしていらっしゃるんですね…!

熊本:正確には私に加え、サイト関連のシステムで2名、ライターさんがヘルプで1名、多くても4人ですね。「こどものヒトサラ」に関する企画や営業は私1人なので基本1人で運営をしています。

- 『離乳食Q&A』の隣にある『食育レポート』はどのような経緯があってコンテンツにしたんですか?

熊本:先ほどもお話したようにママになって、まずぶつかった壁が『食』だったんです。実は、世の中に栄養までちゃんと考えることができるママって少ないんです。でも心の中では、こどもの口に入るものについてちゃんと学びたいと思っている。ただ、どこで学べばいいのかが分からない。


食育レポート 第2回 管理栄養士さんから学ぶ6大栄養素とバランス

熊本:今はネットに情報が溢れ過ぎていて、どれが正しいのかどれが間違いなのか分からなくなっています。だからこそ、ママに『ここなら安心!』って思ってもらえて、こどもと一緒に楽しく学べるサービスを作っていきたいと思ったことがきっかけです。

- 今こどもの『食』についての教育も必要だって言われていますよね。以前、パック詰めされた野菜しか知らないこどもも増えているってニュースで聞いてびっくりしました。

熊本:そうなんです。私も「こどもが魚は切り身になって海で泳いでいると思っている」みたいな話を聞いて、『このままじゃ駄目だ!』と思いました(笑)。たとえば、オクラって収穫前はどういう風になっているか知ってます?

- オクラ……!教養がなくて申し訳ないのですが、イチゴみたいになってる感じですかね?

image05

熊本:実はオクラって枝から縦になって生えているんですよ。尖った部分が全部上を向いているんです。

- 知りませんでした…!

熊本:意外と野菜がどのように生えているのか、ママ自身も全然知らなかったりするんです。ママとこどもが一緒に勉強できる且つ堅苦しくない企画があって、ママもこどもも『食』の重要性を学べるような場所を提供したいんです。口で言っているだけじゃ何も信用されないままになってしまうから、私も率先して勉強しています。



(『オクラの実』:image by aki.kajitani)

今後の展望

- 最終的に、この「こどものヒトサラ」は企画からリリースまでどれくらいの期間がかかりましたか。

熊本:実は半年もかかっていないんです。まず『こういうサービスがあったらいいのに!』っていう思いがあって、企画構成は自分の中で元々持っていました。「やります!」って言ってから、本当に社内社外問わず、色々な人に助けられて実質5ヵ月でリリースすることができました。

- 5ヵ月ですか!スピード感ある企画実現ですね。最後に、今後どのように「こどものヒトサラ」を発展させていこうと考えているのか、教えていただいてもいいですか?

熊本:今後はママが本当に使っているお店や編集部ならではのママコンテンツをもっともっと広めていきたいですね。今は都内と横浜を掲載していますが、ゆくゆくは関西など、広範囲にお店を紹介していきたいです。同時に自分が等身大になって、ママたちの食に関する悩みやストレスから解放するコンテンツをより多く提供していきたいと考えています。

振り返ってみて

・極意その1:課題はニーズ!

・極意その2:課題解決へのスピード感

・極意その3:ユニークコンテンツこそが人々に支持されるWebサービス

取材を通し、熊本さんが自分で体験した悩みがとても良い意味でコンテンツに生かされていると感じた。日常で感じた悩みを会社での「事業ニーズ」と捉え、実現させることは大きな決断力と行動力が要る。競合他社に負けないスピード感も必要。さらに誇れるサービスを作るには、自分以外の協力者の力も不可欠だ。

ただ、本当に必要なWebサービスであれば、今回のケースのように企画の背中を押す応援者がきっと存在するはず。なぜなら、「人生が愉しくなるコンテンツ」で、そのサービスならではのユニークなコンテンツが人々に支持されると思うからだ。

こどもを持つママの悩みは尽きない。「こどものヒトサラ」のようなWebサービスがママの課題を解決し、ママストレスをフリーにする時代が早く来て欲しいと願うばかりだ。

【書籍情報】



「ヒトサラ」がWebを飛び出して本になりました!
東京のベストレストラン、全136店を掲載!―料理人の顔が見える―『ヒトサラマガジン』価格:800円+税

発売日:2014年3月26日

A4変形版/オールカラー全104ページ

 

プロフィール
profile 2
熊本 薫
現場での営業を5年経て、現在企画・編集・営業と幅広く仕事をする、7年目の会社員。
また5歳女の子の母でもあり、自身を含むママたちの食にまつわる悩みを解決したいと立ち上げた「こどものヒトサラ」編集長。
プライベートでは、読者モデル・ママブロガーとして様々な媒体で活動中。
「こどものヒトサラ」 http://hitosara.com/scene/mamakai/
熊本薫のかおる日記 – Ameba http://ameblo.jp/kaotan0501/

 

筆者プロフィール
鈴木 美雪
somewrite専属Web編集者、ライター。ベンチャー界を練り歩きつつ、somewriteをソフトウェアに日々情報発信をしている。