Compathy(http://www.compathy.net/)は、アップロードされた写真に付随されている位置情報や撮影日時を利用することで、今までにない”旅のカタチ”を作り出している。
もともと、Web上に存在する写真アルバムやブログだけでは、「旅のルート」や「時間軸」などを記録することができなかった。
しかし、Compathy は旅の全てを「ログブック」にまとめることで、現地に訪れた人の声や実際のルートを共有しながら、SNS上の友人やその他ユーザーと交流することができる。
一人旅がメジャーになった現在。本屋へ行けば、山のように並べられた旅行雑誌やガイドブックの数々が目に入ることだろう。けれども、ガイドブックに載ったメジャーなスポットに全員が行きたいと思うだろうか……。
また、必ずしも「ガイドブックに載っているスポット」と「現地の人が本当に勧めてくれるスポット」が一緒とは限らないのである。
確かにガイドブックに載ったスポットは魅力的だ。フルカラーで飾られた風景写真などに惹かれる読者も多いだろう。
しかし、旅の醍醐味をより豊かに味わう為には後者の「現地の人が本当に勧めてくれるスポット」へ行くべきだと筆者は思う。旅に必要なものはありきたりな「教科書」ではなく、その旅を生涯の財産とする為の「道しるべ」だ。
ただ、現地の人しか知らないような魅力ある場所へ訪れるには「知識」が要る。それに伴う「情報」も。
現地を知らない者はどうやって現地の「知識」と「情報」を集めれば良いのであろうか――……。そこで、活用できるサービスが「Compathy」である。
『記録』だけじゃなく、『計画』まで持っていきたい
堀江:「写真の位置情報から旅行の記録を作ることができます。でも、ユーザーには『記録』だけではなく、『計画』まで持って行ってもらいたいんです。」
そう話してくれたのは、ワンダーラスト代表の堀江健太郎氏だ。(左写真:堀江健太郎氏)
前述の通り、Compathy は旅の記録をコレクションする機能があり、それを「ログブック」にまとめることで、現地の人の声や旅行者が体験した実際のルートを共有することができる。
堀江氏はCompathyで蓄積されたその「記録」を、次に現地へ訪れる旅行者に「計画」として活用してもらいたいのだ。
確かに、「LCC元年」といわれた2012年度を皮切りに飛行機利用旅行者は年を追うごとに右肩上がりである。「おひとり様」も広がり、個人化する時代になってきた。堀江氏は言う。「特に個人が旅行計画を立てる際のスタンダードとして、Compathyを役立ててもらいたい」と。(※詳細後述)
Compathyを広める中でワンダーラストは、旅行の楽しさを伝えるオウンドメディア『TRiPORT』(http://blog.compathy.net/)を立ち上げ、その運用を行っている。どんなメディアであるか、詳細はリンクをご覧になって頂くとして、今回は『TRiPORT』の運営について詳しく取材させて頂いた。
「人と人を繋ぎたい」 ―― 『TRiPORT』運営秘話!
『TRiPORT』では、旅を愛するライターが旅人必見の「旅のお役立ち情報」から時事的なネタまで、旅に関わる様々なことを紹介してくれている。
また、サイト内にある「旅人の声– Traveler’s Express」では、旅に目的があったり、「自分の旅」に志を持っている人、旅に何かしらの意味を見出している人などに直接取材をして記事化しているというから驚きだ。実際に取材された記事を見てみよう。
(http://blog.compathy.net/2014/01/09/travelers-express-jun-shibui/)
上記は、社会人エンジニアでありながら、「カウチサーフィン」を駆使して世界を渡り歩く澁井氏に取材した記事だ。
「カウチサーフィン」というのはWeb上に存在する国際ホスピタリティー・コミュニティーのことであり、海外旅行等をする人向けに、現地の家に宿泊させてもらう制度の一つである。
カウチサーフィンは泊める側の親切と信頼で成り立っている。カウチサーフィンによって異国に訪れた澁井氏だからこそ分かる、鮮やかな内容は、まるで彼の記憶を切り取ったかのようで読み応えたっぷりだ。
その他にも『TRiPORT』には、下記のような旅行に役立つ記事が掲載されている。詳細はリンクをご覧頂きたい。
(http://blog.compathy.net/2013/11/27/how-to-use-couchsurfing-host/)・ヨーロッパ周遊に役立つ!「easyJet」でオンラインチェックインする方法
(http://blog.compathy.net/2013/12/19/lcc-easyjet-onlinecheckin/)
今回は実際にライターとして『TRiPORT』の運営に携わっているインターン生にもお話を伺うことができた。
レティ:「私は日本に留学に来ていますが、私が面白いと思う記事でも日本の人に面白いと思ってもらえなかったり、違いがある点が難しいですね。
今は私が日本のみなさんにぜひ知ってもらいたいと思うことを書いています」
そう教えてくれたのは、インターン生ライターとして働くGuarini Letizia(グアリーニ レティツィア)さん。皆にレティと呼ばれている。彼女はイタリアの出身で、『TRiPORT』における「各国の暮らし – 世界の“じもトーク”」の中で下記のように話してくれている。
― ナポリは危ないって聞きますけど、それは日本人の勝手な先入観なのかも。日本人が持ってる、イタリアへの先入観ってナポリの他に何かありますか?
レティ:「ナポリタンがイタリアのものだと思っている人がいますけれど、あれは日本人が作ったものです。イタリア人としてはありえない。笑 あれはパスタじゃなくて違う食べ物として考えたら食べられないことはないんですけれども、美味しいとは思わない。パスタとケチャップを一緒にするのはちょっと・・・どうしてこういうことになってるのかちょっとよくわからないですね。笑 ナポリタンもそうですし、あと明太子のパスタも。明太子は好きだけど明太子パスタはちょっと違和感があります。」女性はナンパの対象だけじゃないレティ:「・・・それから、男性はみんなかっこいいですかとか、みんな優しいですかとか聞かれます。あとナンパが上手ですかとか、男性のことしか聞かれないんですよね。でも、イタリアには女性も住んでいて、女性もナンパできるし、どうしてみんな男性のことばっかり聴くのかなあって思います。日本のテレビでも結局イタリア人の男性しか出ないじゃないですか。しかも必ずマッチョでナンパしてる人。毎日そういうイメージしか提供されないから、結局イタリア人はみんなそうだって思われてしまう。それはちょっと嫌ですね。」
「情熱的なのは男だけじゃない!世界の“じもトーク” – by レティ from イタリア –」
そんな彼女にワンダーラストで働き始めたきっかけを聞いてみると、
レティ:「2013年の9月にこの職場に入りました。ちょうど仕事を探していたところで『Compathy』というプロジェクトを知り、日本と外国を繋ぐ仕事がとても良いと思い、堀江さんの思いに共感してここで働くことになりました」
と教えてくれた。
事業に様々な国籍の人間が関わるワンダーラストは、「職場」という形で国と国を繋いでいるのである。
また、同じくワンダーラストでインターンとして働く立花実咲さんはこう話す。
立花:「元々書くことが好きでブログなどもやっていたんですが、それは自分のためにしか書いてなかった記事でした。今は自分以外の人の為だったり、『読者』を意識して仕事をしています」
ワンダーラストでは、『TRiPORT』のコンセプトもインターン生自らが考え出したものだという。さらに、
立花:「私は以前、一人旅をしていたんです。なぜかというと、『現地の人の生活』が気になったからなんです。その経験を生かしたい」
と話してくれた。行ってきたのはトルコやヨーロッパ、北アフリカの国々。中でもトルコは料理も美味しく、旅にイチオシの国だという。
そして記事の更新頻度やメディアの運営体制についても下記のように教えてくれた。
立花:「1週間で2~3本更新するようにしています。だいたい2日で1記事ですね」
運用体制については、レティさんと立花実咲さんがライティングを担当し、編集は別のインターン生が行っているとのこと。メディアを運営する上でのこだわりは、”現地の生の声”を届けること。そのためには、国際的知識を持った彼女らの存在が非常に大きい。
立花:「真面目な内容ばかりだと読者も飽きてしまうので、濃い旅行記事の他に流行りのネタなども盛り込んでファンを増やす工夫をしています。
例えばソチでオリンピックがあったときは、
『雪国だけどあったかい!? 2014年冬季オリンピックのソチとはどんな場所?』
といった記事を掲載するなど、読み物として面白い物、その地域に興味がある人にグッとくるものを載せるようにしています」
上記のように、”時事ネタ”をきっかけにフラッと訪れたライトユーザーからメディアの固定ファンを増やすための工夫も教えてくれた。
また、記事を書くだけでなく自らSNSにおける拡散手法やSEOまで考えて、現地における生の情報をいかにダイレクトに読者へ届けるかを日々切磋琢磨している。
取材を通し筆者は、ワンダーラストの自由な職場の中にも、『情報を伝えたい』、『人と人を繋ぎたい』と一心になるメンバーの熱い思いを感じた。
「Compathyを個人旅行計画サービスのスタンダードにしたい」
今後の展開について、堀江氏に伺ってみた。
堀江:「Compathyにはまだまだデータが必要です。留学で日本に来ているインターン学生などにも協力してもらい、少しずつリピーターが増えてきた印象です。ワンダーラストのオウンドメディアである『TRiPORT』を活用し、ユーザーの獲得をやっていきたい」
海外へ旅行を決めた人間なら、誰だって現地の情報が知りたいはずだ。堀江氏を含めメディアに関わるインターン生達は『TRiPORT』を運営することで、読者の胸に現地の情報を訴えかけ、メディアのファンを増やしてきた。
堀江:「Compathyのログブック(旅行記録)上にある『行ってみたい』というボタンを押すと、『行ってみたい』を押した場所が『行ってみたい!リスト』として1つの地図上にまとまります。これをスマホで閲覧することで観光ガイドの代わりにもなるのですが、ここに時間軸や移動手段情報等も付与した旅行プランニング機能として進化させ、個人旅行時代の計画サービスのスタンダートを目指します。今やっているCompathyを個人旅行計画サービスのスタンダードにしたい。また、Compathyは Facebook登録を通し実名制にすることで口コミにも信憑性を持たせ、差別化を図っています。今後は、ニーズがあるのでどんどんスマートフォンにもシフトしていくつもりです」
もはや、スマートフォンは旅行における必需品となった。一人旅が増えているこの時代、ガイドブックよりも先にスマートフォンで「じゃあまずCompathyを見てみようか!」と世間が思う日もそう遠くないのかもしれない。
ちなみにこのsomewriteからでも『TRiPORT』の記事を読むことができる。また、こちらの『TRiPORT』メディアページから読者登録することで、新着記事や人気記事をイチ早く読むことが可能だ。
旅の思い出である「記憶」から、「記録」へ。そこからさらに「計画」へ進化を遂げるサービス、Compathy。
Compathy、並びに『TRiPORT』の記事をきっかけにどれほどの国と国を、どれだけの人間同士が繋いでいくのだろうか。今後の展開に目が離せない。
(写真左:立花 実咲さん、中央:堀江健太郎代表、右:Guarini Letiziaさん)
堀江 健太郎
株式会社ワンダーラスト(Wanderlust Inc.)代表。過去、日本IBMにて5年間、経営コンサルタントを担当。
その傍らでaribnb等を使った海外旅行者のホストを行い、「旅をもっと素晴らしいものにするため、自分にできることがある」と気付き、インターネットを使って旅行体験をより良くする事業を立ち上げようとワンダーラストを設立。海外旅行をもっと自由に楽しく、世界に1つでも多くの「つながり」を生み出すことを理念としている。「世界とつながる旅のコレクション compathy」
http://www.compathy.net/“Compathy Travel Magazine”「TRiPORT」
http://blog.compathy.net/
鈴木ミユキ
平成元年(1989年)生。神奈川県出身。Web編集者。大学在学中からベンチャー企業株式会社nanapiにて記事の編集やライター業務に携わり、2014年サムライト株式会社入社。現在ではWeb編集やライティング他、企業のオウンドメディア立ち上げ支援に携わっている。