シリアルアントレプレナー小川浩が描く、 オウンドメディアの未来予想図。


Web業界に身を置いているのであれば、“小川浩”という名前を一度は耳にしたことがあると思う。もし知らないのであれば、ぜひ、覚えておいた方がいい。
東南アジアで商社マンとして活躍し、マレーシアで現地の日系企業向けにPC販売事業を起業。帰国後は日立製作所やサイボウズといった上場企業だけでなく、フィードパス(2011年 にYahoo!の子会社となったベンチャー企業)のCOOを経験し、独立。その後、RSSフィードを中心としたセマンティックWeb技術のベンチャー、モディファイを 創業するなど、常に時代の先を歩んできた人物だ。

 

(写真:小川浩氏)

 

 

 

 

 

 

そんな彼が今、情熱を注いでいるのがソーシャルネットワークプラットフォーム「Revolver」である。


これは、誰でも簡単にオンラインコミュニティを作成したり既存の コミュニティに参加できるもの。テキストや写真、動画などのアップロード、シェアは もちろん、同じ趣味を持つ新しい仲間や興味を発見することが可能。

今回は、長年に渡って日本のWeb、そしてモバイルの変遷を追いかけてきたシリアル アントレプレナーである同氏だからこそ見える、オウンドメディアの未来、そしてRevolverの目指す未来について語っていただいた。

コンテンツは出会いの場、コミュニティは関係構築のための遊び場。

– まず、Revolverが生まれたキッカケからお聞かせください。

小川 まだ、FacebookやTwitterが普及して間もない頃ですかね、その頃からソーシャルメディアマーケティングを手がけていたんです。具体的には、投稿管理やアカウント管理といったことですが。そして、実は数年前からオウンドメディアの構築・提案も手がけていました。今こそ無料で誰でも出来ますが、当時は非常に高額で数百万という金額がかかっていました。
やっぱり、企業が情報発信をすることは大事だと思っていました、特に中小企業においては。日本に存在する企業の99.7%は中小といいますし。ただ、大手みたいに潤沢な予算はありませんから、自社でメディアを持つことなんて無理だったんですよ。

「どんな規模の会社でもオウンドメディアを持てるようにならなければ、日本は良くならない。じゃあ、無料で簡単にメディアをつくれるようなサービスを僕たちがつくろう」、そんな思想から、Revolverは生を受けました。

­- Revolverの場合、オウンドメディアというよりは、SNSのようなイメージが強くあります。なぜ、コミュニティ機能にこだわったのでしょうか?WordPressのように、発信の機能だけに特化するのもシンプルかと。

小川 オウンドメディアって色々と種類があっていいと思うんですよね。今の日本のオウンドメディアって、ユーザーに訪れてもらうことを重点に置いたつくりになっていますよね? 潜在的なファンに対してはコンテンツをタッチポイントとして機能させるだけで十分だと思いますが、もっとコアなユーザーにはコミュニティのような仕組み、つまりWeb上で遊んでもらえる場所があってもいいハズです。

だから、Revolverはコミュニティにこだわりました。まずはコンテンツで潜在的な顧客との出会い、そしてコミュニティを通してファンにする。関係を醸成できれば、きっとそのユーザーたちは見込み客になると思います。

 

­- ちなみに、会社名にもサービス名にもなっている、Revolerですが、どういう意味なんですか? まさか、ビートルズのアルバムですか??

小川 (笑)。まぁ、それもアリですね。WordPressを提供している会社が、オートマチック社じゃないですか?オートマチック(自動型拳銃)に対しての、リボルバー(回転式拳銃)なんですよ。

­- なるほど!!

小川 回転式拳銃って仕組みとしては古臭いですけど、安全で壊れないんです。マニアックなことを言いますと、自動型って連射すると詰まるんです。不発弾になる可能性もあります。

対して、回転式は詰まらないので、安全なんです。だから日本の警察は未だにリボルバーを使用しているんです。かのゴルゴ13がリボルバーを愛用しているのも同じ理由です(笑)。

繋がり過ぎるFacebookは、“建前の世界”。マーケティングのヒントは落ちていない。

­- たしかに、コンテンツは一つの出会いのキッカケであって、そこからの潜在ユーザーとのコミュニケーションは現状、メルマガやFacebookページなどに限られていますね。

小川 今、会社のフロントページはFacebookページと言われています。実際、その会社のページをわざわざ検索して訪れるユーザーもほとんどいないと思います。だから、その会社が提供するコンテンツが出会いのキッカケなんですよね。

ただ、そのコンテンツたちも、バイラルするウイルスをもっていなければいけない。そして仮にコンテンツを通して潜在的なファンと出会った時に、次にどう関係をつくるか。その時、コミュニティが有効になると思います。

­- まだまだ決して多くはありませんが、CanonやRICOHなどが展開しているような、ファンサイトのようなイメージですか。

小川 まさにそうですね。ユーザーからすると、「俺はこのアイテムが好きだ」とか、「私は誰のファンだ」というものを明示する機会が現状ありません。

社会人になると、知らない人や取引先と繋がってしまうこともあり、ソーシャル上での行動が制限され本音が書けなくなる。開かれている世界なのに、建前だけの世界になってしまっているんです。きっと、繋がり過ぎてしまっているのだと思います、今の時代。

少しシーンは変わりますが、電車の中を思い浮かべてみてください。昔は電車の中で漫画や新聞を読んでいる人って多かったと思いますが、今の時代はみんなスマホです。具体的に何をしているのかわかりません。

­– そこでマーケティングリサーチが出来るわけではないですが、たしかにそこは閉じた世界で、人の行動が見えませんね。「スマホをいじっている」、で片付いてしまう。

小川 これはまさに、「人の趣向や好み」が見えなくなっている、縮図なのではないでしょうか。ただ、企業がコミュニティを所有しユーザーと交流できる場所を確保しておけば、要望も拾えますし、リサーチも出来る。何より、ユーザーとの信頼関係が築けると思います。

こういったコミュニティは大手だけでなく、当然、中小・一般企業も所有できるようになれば、安価で確度の高いマーケティングが出来るようになる、そう踏んでいます。

 

2020年、東京オリンピックまでに、“ファストWeb”を実現する。

– 最後に。今後、Revolverを通して実現したい世界観をお聞かせください。


小川 発想的に、「ファストWeb」のような世界観を考えています。ファストファッションやファストフードみたいに、安価で一定のクオリティが担保されていて、かつ早い。そして情報においても、欲しい情報がすぐに手に入るのはもちろん、すぐに発信できることが大切です。

日本には、まだまだインターネットの恩恵を授かっていない企業がたくさんあります。情報弱者が多いから、とかそういう意味ではなくて、つくることに対するハードルが高い。現状、サイトやコミュニティをつくろう、アプリをつくろうと言っても障壁が多すぎます。

「アプリとWeb、そしてモバイルで情報を簡単に発信できるモノ」、「最先端であるモノ」、そして「安全であるモノ」を用意しておけば、きっと多くの人が気軽に情報を発信できると思うんです。そして、建前だけで繋がる世界ではなく、もっと趣味・嗜好に合わせてそこを誰かがやらない限りは、日本のインターネットはグローバルなものにならない。

­- その想いの根源が生まれたキッカケとなるような出来事がやっぱりあったんですか?

小川 東南アジアで起業したこと、でしょうね。日本はネットの後進国なのだなとそこで痛感しました。商社時代、日本製というだけでリスペクトされていましたけど、Webの世界では残念ながらそんな話は聞きません。むしろ、遅れています。

通信キャリアにおいてもそうじゃないでしょうか。海外はSIMフリーが基本ですし、日本は文字通りガラパゴス。日本の携帯がiPhoneなどの海外のスマホに負けた理由って、遊びやエンタメの情報しか扱えなかったからだと思っています。

就職活動中の学生が一気にiPhoneに換えたという話が印象的で。就活中に選考を受けている 企業からのメールを確認できるのってGmail、いわゆるフリーメールじゃないですか。ガラケーだとそれが難しい人もいるけど、スマホならどこでも確認できますよね。だから、多くの学生がiPhoneに乗り換えたと言われているんです。

­– たしかに、自分も就職活動中はガラケーだったので不便だなと感じていました。当然、タブレットもありませんでしたし。

小川 今は誰もがスマホを持つ時代になりました。いつでも、どこでも情報を手に入れられる時代です。ただ、“誰もが発信できる”かと言うと、まだまだです。日本にある400万社という企業のうち、まだ40%しかホームページと言えるものを持っていません。

2020年には、東京でオリンピックが開催されます。きっと多くの外国人が訪れるでしょう。その頃までには、80%の企業や飲食店にHPをもってもらい、外国人がGoogleマップでレスト ランを検索した時に、スマホ対応で、かつ外国語対応もしているような未来を実現していきたいんです。

Revolverが多言語対応しているのは、それが理由でもあります。ただ、自分だけではこの目標を遂行するのは時間がかかるので、先日、他社とアライアンスも結びました。もっと、気軽に情報が発信できる世界、まずはその実現を目指して、これからもRevolverの普及と進化に尽力しきます。

­- 経済の底上げという点で見ても、小川さんの考える世界観には強く共感しました。本日は有り難うございました!