「Shopre(ショプレ)」というサービスをご存知だろうか。「Shopre」とはインターネット上における”店舗”を単位とした口コミ&評価プラットフォームである。彼らはどのような思いでこのサービスを創り出したのだろうか。
今回は「Shopre」ベータ版が2014年4月16日にリリースを果たしたというニュースを受け、運営元である株式会社パワービジョン山田竜也(やまだりゅうや)社長にお話を伺ってきた。
目次
1.ネットショッピングに「簡単・安心・ワクワク」を!
ーまず、Shopreというサービスの概要を教えて下さい。
山田:Shopreはネットショップの口コミサービスです。今でこそ商品や物に紐付いた口コミ情報はインターネット上に溢れていますが、お店単位の口コミ情報はほぼ存在しません。まさにお店単位での口コミを集め、お店を評価するプラットフォーム、それがShopreです。
検索エンジンがサイトのドメイン(お店)と各ページ(商品)をそれぞれ評価しているように、ECサービスでもドメイン(お店)の評価と各ページ(商品)の評価、それぞれあってもいいと我々は思っています。
ーなぜ、この事業を立ち上げようと思ったのでしょうか。
山田:インターネット上には、面白い商品セレクトやコンセプトを持つ店舗が数多く存在します。しかし、検索エンジンやショッピングモール経由では、そういった店舗が見つけづらいのが現状です。
そんな中、誰もがワクワクする買物体験ができるお店を簡単に見つけられ、初めてのお店でも安心感を持って買える。そんな仕組みを作りたいと思い、この事業を立ち上げることにしました。あと、こんなサービスが単純に欲しいと自分自身が思ったから作ったという理由も大きいですね。
起業する、新規事業にチャレンジする、その動機は人それぞれだとは思うが、山田社長の場合、自分自身がこんなサービスが欲しいから作ったという。
非常にシンプルだが、そんなユーザー目線での思いから、この事業を立ち上げるに至ったという話は非常に印象的だった。
2.従来の仕組みやサービスの限界
山田社長によると、現状、Eコマース市場全体の中で、最大手である楽天、Amazonの2強が獲得している流通総額のシェアは約2割程度だという。裏を返せば、残り8割は、それ以外のショッピングモールやサイト、ブランドショップ、個人商店から成り立っている。
また、インターネット上には国内だけでも20万以上のネットショップが存在し、
1:Yahoo!ショッピングの無料化
2:誰もが無料で簡単にオンラインショップを持てるBASEやSTORE.JPなどの登場
により、ネットショップの店舗数は大幅に増えており、今後も右肩上がりに推移していくと見込んでいる。
しかし、そんな状況にも関わらず、消費者がお店を知る手段は限られており、自分に合ったお店と出会える機会が多いとは決して言えない。山田社長は以下のように述べている。
山田:googleの検索エンジンは膨大な情報を整理し、ユーザーが必要な情報を最短最速で取得するためのイノベーションを起こしました。しかし、店舗を探すという意味では、検索エンジンの機能は限定的です。
一方、楽天、Amazon、Yahoo!といったショッピングモールは、ECのディレクトリーサービスのようなもので、ECのコンサルタントに例えることが出来ます。彼らコンサルタントが整理し、提案する店舗や情報との出会いは、もちろん消費者にとって価値のあるものとなります。
しかし、様々なショッピングモールや個人店舗が増えている昨今、それら従来のサービスや仕組みでは、自分とマッチした店舗との出会いには限界があるように感じています。そこで、Shopreがプラットフォームとして、消費者と様々なお店が出会う機会を作りたいと考えています。
3.独自のアルゴリズムでお店を評価
― 店舗の登録や口コミの投稿は誰でも出来るようになっているのでしょうか。
山田:基本、誰でも出来るようになっていますが、ただ、現状では、サービスの利用にソーシャルログインが必要になります。近日、タグ付けや口コミを投稿するときのみ、ソーシャルログインを必須にするように変更し、ユーザーの利用ハードルを下げたいと考えています。
― お店単位での評価とは具体的にどのようにやっていくのでしょうか。
山田:まず、お店の評価項目として「お買い得」「面白い」「安心」「また買いたい」といった指標を設定しています。また、各レビューに対しても「いいね!」「欲しい!」「役に立った!」のように、ユーザーは評価を付けることが出来ます。さらに、そのお店のイメージに合うタグを設定し、そのタグに対してクリックで投票することも出来ます。
― なるほど。
山田:これらの「口コミ」と「タグ」を活用し、独自のアルゴリズムを組んでお店を評価していきます。
従来、ネットショップは「価格」と「商品多様性」で評価されることが多い。しかし、Shopreでは、別の切り口でお店を評価することを大切にしていきたいという。独自のアルゴリズムを組み、特にお店の「オーソリティ」と「ユニークさ」を重視していきたいと山田社長は強調されていた。
4.Shopreが消費者とネットショップに提供する価値
― Shopreが消費者に提供する最大の価値について教えてください。
山田:Shopreを見れば、今まで出会ったことのない素敵なお店と出会え、ワクワクする買物体験が出来る。また、買ったことのないお店でも安心感を持って買える。
そんな世界を実現したいと考えていますし、それが消費者に提供する最大の価値と言えると思っています。
従来、特定の商品を目的にお店にやってきた消費者は、商品購入という目的を達成したら、それで完結してしまい、そのお店のお客様としてリピートにつながるケースは多くないように感じています。しかし、お店単位で来店する場合、商品というよりそのお店自体に興味があったり、好意を抱いているため、リピートにつながることも多いのではないかと考えています。
たしかに、そういったサイクルを生み出すことが出来れば、ユーザーだけでなく、店舗にとっても、このShopreというサービスは価値のあるサービスとなるはずだ。
― Shopreのターゲットとなるネットショップはどのようなお店になるのでしょう?また、言い方を変えると、消費者はどんなお店との出会いが期待出来るのでしょうか?
山田:楽天やAmazonのショッピングモールに出店はしていないけど、ユニークだったり、優れた商品を提供している個人商店や中小企業の店舗は日本にはいっぱいあります。
従って、ここだという店舗は存在しませんが、ユーザー1人1人によって趣味、嗜好は異なるため、そういった意味では、全ての店舗がターゲットになり得ます。
具体的な例を挙げると「Oh my Glasses」があります。
山田:「Oh my Glasses」はメガネのECサービスですが、オンラインショップにも関わらず、メガネの試着が自宅で出来るというユニークなサービスが売りで、一躍有名になりました。もちろん、今でこそ知る人ぞ知る有名店となりましたが、一昔前までは、誰も知らないネットショップだったはずです。
そんな風に知名度がないお店でも、このShopreを通じて、ユニークなサービスや店舗が発見出来る、そういった出会いのきっかけを作りたいと考えています。
5.ネットショップの未来とShopreの今後の展望
最後に、山田社長は『ネットショップの未来』に関する考えを聞かせてくれた。
山田:楽天やAmazon、Yahoo!といったプラットフォームに依存せず、それらのプラットフォームから脱却した数十億円規模の売上を誇る個人商店がたくさん出てくる、私はそんな未来がくると考えています。
例えば、中国では信用力や流通面の問題から、個人商店の台頭は難しい環境にあるようですが、日本では、商習慣や信用力の高さ、流通の安定性から、個人商店が伸びる要素が多数挙げられます。
帝国データバンクの調査によると、日本には、創業100年超の「長寿企業」が2万6000社存在し、その数は世界一とのことです。その中には大小様々な企業が存在しますが、個々の企業が長い間信用を積み重ねると同時に、絶え間なく工夫を続け、時代の変化に対応してきたからこその結果だと思います。また、これだけの長寿企業が生き残っているのは、企業側の努力もさることながら、そのような企業を愛する私たち消費者の多様な価値観が影響しているはずです。この「世界一」を作り上げてきた日本人の多様な価値観は、インターネット上でも同様に、個人商店の多様性や発展に寄与すると私は確信しています。
また、市場の拡大から、個人商店向けの決済、物流、会計、運営の外部サービスが充実してくるはずです。そうなると、例えば、Amazonや楽天のように、自社の大型倉庫や設備を持っていないが、個人商店でも即日配送出来る世界がやってくるのではないかと予測しています。これらは、個人商店の台頭の大きな一助となることでしょう。
― なるほど。非常に興味深いです。それでは、ネットショップの未来を予測する中で、Shopreの今後の展望を可能な範囲で教えてください。
山田:当面の展開として、スマートフォン及びアプリ対応を早急に進めて行きます。一方、無数のお店を評価し、独自のアルゴリズムを構築するためには、膨大なデータが必要となるため、まずは、このデータ集めに注力していき、Eコマースのデータベースとなるべく、尽力していきます。
そして、国内に留まらず、我々は世界を見据えています。グローバルで展開し、まさにレストランやローカル店の口コミ情報サイトであるYelpのネットショップ版を目指していきます。
6.まとめ
20万以上も存在するというネットショップの中で、自分が知っているお店の数はたかが知れている。ましてや、買ったことのあるお店なんて、約20万店舗の内の本当に一握りのはずだ。また、新しいネットショップで買うとき、心に不安があるのも事実である。
その中で、Shopreがネットショップのプラットフォームとして、消費者とお店が出会う機会を提供することは、非常に価値のあることだと思う。今後、彼らの事業がネットショップをさらに発展させる大きなきっかけになるのではないだろうか。
(somewrite編集部)